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令和2年(2020年)11月26日 参議院農林水産委員会が開催されました。今回の議題は、種苗法の一部を改正する法律案です。
午後からは、有限会社矢祭園芸代表取締役・全国新品種育成者の会前会長金澤美浩氏、公益社団法人全国愛農会会長・家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン代表村上真平氏の2名を参考人としてお迎えし、意見をお伺いしました。のちに、参考人に対し質疑を行っています。
なお、正式な議事録については、国会会議録検索システム(国立国会図書館HP)をご参照ください。
【質問事項】
1 輸出促進の観点から、種苗法の改正の重要性について
2 主要農作物種子法の廃止後、2年半が経過したが、生産現場で混乱が生じていないか、都道府県における種子の生産体制はどうなっているのか
3 我が国で開発された種苗の海外への流出について、実態を把握すべき。このような状況について、現在の法制度などでどのような対応が可能か
4 今回の法改正で、自家増殖に対し、育成者権を及ぼすこととした理由。「有機農業」、「自然農法」に取り組んでいる農業者が、「自家増殖の許諾」をどのような方法で得るのか
5 農業者の許諾料の負担はどの程度増えるのか。例えば、平均的な農家、また、大規模な農家の年間の負担額はどの程度になるか
6 現在、日本の種苗で、外国で登録品種はどの位あるのか。海外での種苗登録を行う上での障害は何か
7 海外での種苗登録をどのように進めるのか
【参考人の意見陳述要約】
【参考人に対しての質問事項】
8 輸出あるいは作成した種苗が外国で使われていくことが、日本の農業の発展にどのようにつながっていくのか
9 農水省のヒアリングでは、外国人から育種してきた品種を売ってくれと言われて断ったという事例が聞かれる。現場の話としてそのような話があったか伺いたい
10 種苗登録されたものについて許諾が必要になる制度について、育種家の立場から見て、どのように評価されているか
11 自家増殖と農家の負担について伺いたい
1 輸出促進の観点から、種苗法の改正の重要性について
山田
今回の種苗法の改正は、我が国の優良品種が海外に流出することを防ぐことが主な内容である。政府では、10年後には農産物などの輸出を、現在の5倍以上の5兆円とする目標を作っている。
我が国の農業の発展、農家の方々にとっても、輸出の拡大は、大変重要である。日本の農産物は品質の良さがセールスポイントになっており、品質の良さを発揮していくためには、国内で優良な種苗を育成していくことが不可欠である。
輸出促進の観点、農業の発展という観点から、種苗法の改正の重要性について大臣に伺いたい。
野上浩太郎 農林水産大臣
優良な植物新品種が海外に流出して輸出機会が失われたのは、現在の種苗法では、国内における権利保護を想定しており、登録品種であっても海外への持ち出しは止めることができないこと、また、守るべき知的財産の管理がこれまで緩過ぎたことによるものと考えている。
こうした反省に立って、今回種苗法を改正し、登録品種については、出願時に国内利用限定の利用条件を付せば海外持ち出しを制限できること、また登録品種の自家増殖については、育成者権者の許諾に基づき行うことといった措置を講ずるものである。
この改正は、日本の強みである植物新品種の流出を防止するとともに、新品種の保護を充実させることで、品種開発のインセンティブを高めて、優良な品種の開発を促す、また日本の輸出競争力を確保する観点からも大切な改正であると考えている。
山田
輸出促進について、様々な対策が必要だが、この種苗法の改正も大きな力になると思う。
2 主要農作物種子法の廃止後、2年半が経過したが、生産現場で混乱が生じていないか、都道府県における種子の生産体制はどうなっているのか。
山田
この種苗法の改正は、主要農作物種子法の改正と絡めて様々な議論がされている。2018年4月に主要農作物種子法が廃止されたが、この法案の審議でも様々な議論があった。
廃止後2年半が経過しているが、生産現場での混乱が生じていないか。また、都道府県における種子の生産体制がどのようになっているのか、伺いたい。
宮内秀樹 農林水産副大臣
主要農産物種子法の廃止は、戦後不足した食料の増産を図るために、稲、麦、大豆の原種及び原原種の生産等に関する事務を全ての都道府県に一律に義務付けていたことを止めて、官民の総力を挙げて多様なニーズに応じた種子供給体制を構築するために実施したものである。
一方、都道府県の中には、新たに地域の独自性を反映した官民の連携や種子供給体制の整備、また条例制定の動きが出てきているところであり、地域の農業に必要な対応を自ら判断して講じていると考えている。
種子法廃止後も、各県が必要とする種子供給業務に要する財政需要については引き続き地方交付税措置が講じられており、農林水産省が都道府県の担当部局から聞き取ったところによると、各県とも種子法廃止後も混乱なく種子供給に係る事務を継続しており、令和2年度も種子法廃止前とおおむね同程度の予算が計上されていると承知している。
このように、生産現場で混乱が生じている状況にはなく、都道府県において、地域の農業の特徴を踏まえて種子供給体制がしっかりと確保されていると思う。
農林水産省として、引き続き、良質な種子の安定供給を図れるよう、都道府県における業務の実施状況について注視をしていきたい。
山田
主要農作物種子法の改正の際に私も大変心配したのが、自治体が今までどおりの業務をやるのかどうかということである。この点について、今後も農水省としてチェックをしてもらいたい。
3 我が国で開発された種苗の海外への流出について、実態を把握すべき。このような状況について、現在の法制度などでどのような対応が可能か。
山田
日本で開発された様々な品種、私の地元の石川県でいえばブドウの「ルビーロマン」、そのほかブドウの「シャインマスカット」、イチゴの「紅ほっぺ」など、我が国の優良品種が海外でネット販売がされているという報道があった。
我が国で開発された種苗の海外での流出は、大変重要な問題であるが、農水省として実態を把握すべきではないか。そして、このような状況について、現在の法制度においてどのような対応ができるのか伺いたい。
熊野正士 農林水産大臣政務官
当省の補助事業による調査により、中国と韓国でインターネット販売されている果樹などの種苗の中に、日本で品種登録されている名称と同じものが36品種あることが分かった。この調査結果からも、海外において我が国の品種は人気が高く、流出のリスクが高いことが明らかとなった。
一方で、現行法では、正規に購入した登録品種の海外への持ち出しは合法であること、自家増殖に許諾が不要であるため増殖の実態を把握できないことから、海外流出の実態を把握することは相当困難である。
このような登録品種の海外流出に対し、現行の法制度の下では、海外で品種登録されれば、その国の制度に基づき、当該国での流通、販売の差止め等の措置をとることができるほか、海外での品種登録の有無にかかわらず、海外で増殖された種苗やその収穫物が我が国に逆輸入される場合には、輸入の差止めの措置をとることができるが、正規に購入した登録品種の海外への持ち出しは合法であり、止めることはできない。
今般の改正法案では、国内利用限定の利用条件を付せば海外への持ち出しを制限できるとしており、さきに述べたような我が国で品種登録されている品種や出願中の品種についても、国内利用限定の利用条件を付すことができるとしているので、更なる海外流出を防ぐことが可能となる。
山田
海外流出には、現行法では十分対応できないという説明であった。改正法もあり、外国での登録の問題もあるが、農水省として、海外への流出の状況を今後しっかり把握し、対応を検討していただきたい。
4 今回の法改正で、自家増殖に対し、育成者権を及ぼすこととした理由。「有機農業」、「自然農法」に取り組んでいる農業者が、「自家増殖の許諾」をどのような方法で得るのか
山田
今回の改正で、自家増殖について様々な議論がある。育成者権を自家増殖に及ぼすこととした理由を伺いたい。
また、「有機農業」をやっている方々、「自然農法」に取り組んでいる方々が、「種苗法の登録品種でない在来品種・固定種」を自家採種することについては特に問題がないが、仮に「登録品種の自家採種の許諾を得ようとする」場合に、どのような方法で行えばいいのか。
太田豊彦 農林水産省食料産業局長
山形県の紅秀峰の種苗が国内の農業者により増殖をし、オーストラリアに流出し、同国で産地化され、逆に我が国へ輸出されてしまったという事例が起きており、これまで管理が緩過ぎたと考えている。
現行法でも、自家増殖をした登録品種の種苗を海外に持ち出すことは、育成者権の侵害にはなるが、登録品種の増殖実態の把握、疑わしい増殖の差止め、刑事罰の適用や損害賠償に必要な故意や過失の証明、このようなことが困難なので、海外持ち出しの抑制が困難であった。
また、法改正により、育成者権者が海外持ち出し不可の条件を付した場合に、正規に販売された種苗の持ち出しができなくなる結果、農業者個人の増殖種苗が狙われることが懸念をされる。このため、登録品種の自家増殖については育成者権者の許諾を必要とすることとしたいと考えている。
また、有機農業や自然農法に取り組む農業者も、ほかの農業者と許諾の受け方に違いはない。自家増殖の許諾を受けるためには、各育成者権者に申請をしていただく必要があるが、団体等がまとめて許諾を受けることも可能であり、個人で許諾を受ける場合も簡単に手続ができるように、許諾契約のひな形を示していきたい。
山田
有機農業をやっている方、自然農法に取り組んでいる方は、熱意を持って取り組んでいる。そのような方々が困らないように対応していく必要がある。
優良な種苗を守っていくことと、熱心に取り組んでおられる方々が不便にならないように、今後もしっかりと普及や説明をしていただきたい。
5 農業者の許諾料の負担はどの程度増えるのか。例えば、平均的な農家、また、大規模な農家の年間の負担額はどの程度になるか
山田
農業者の方々の負担が種苗法の改正によって増えるのではないかという懸念が言われている。許諾料の負担によって農業者の負担はどの程度増えるのか。
それほど大きな負担ではないのではないと思うが、例えば平均的な農家、規模の大きな農家が、年間で平均的にこのくらいの負担になるのではないかを示してほしい。
太田豊彦 農林水産省食料産業局長
一般品種を栽培している農業者、あるいは登録品種でも種子を購入して栽培している農業者は、経営規模にかかわらず、許諾料負担が法改正によって増えることはない。
他方、登録品種を自家増殖せず種苗を作付けごとに購入している農業者は、種苗代の一部の許諾料相当分を負担しているところであるが、法改正後に登録品種を自家増殖する農業者は、それと同等の許諾料を負担することになると想定している。
この許諾料の水準については育成者権者が決定するものであり、政府が見解を示すことはできないが、農研機構や都道府県については普及を目的として品種を開発しているため、営農の支障となるような高額の許諾料を農業者から徴収することは通常はない。民間の種苗会社についても、農研機構や都道府県の許諾料の水準を見ているので、著しく高額な許諾料となることは考えにくい。
仮に、現在、公的機関が種苗の増殖業者やJAに課している許諾料と同額の自家増殖の許諾料になるという前提を置いて、面積当たりの年間許諾料を試算すると、水稲を10ヘクタール栽培する場合で年間260円から1600円程度、露地ブドウを1ヘクタール栽培する場合で一年当たり3000円から3900円程度の許諾料となる。
山田
水稲10ヘクタールで、高いところで、1年間で1600円という話があった。これはあくまで試算だが、それほど大きな負担ではないのではないか。10ヘクタールの規模は、相当大きな農家なので、このような負担になる。一方で、我が国の優良品種を守っていくことも大事なので、多少の負担はお願いをしていかなくてはいけないのではないかと思う。
6 現在、日本の種苗で、外国で登録品種はどの位あるのか。海外での種苗登録を行う上での障害は何か
山田
今回の改正によって海外に流出することを防ぐ趣旨の話があったが、一方で、網の目をくぐって、持ち出されることが今後もあるのではないかという懸念がある。
実際にその網の目をくぐって持ち出されるものについては、海外のそれぞれの国の法律の制度で種苗登録を進めていく必要がある。現在、日本の種苗で外国での種苗登録はどのくらいあるのか。仮に種苗登録をしようとした場合にどのような障害があるのか
太田豊彦 農林水産省食料産業局長
農林水産省では、平成28年度の補正予算から海外における品種登録を支援している。令和2年9月末現在で295品種を支援し、登録済みの品種が85品種となっている。また、外国で出願公表をして、仮保護を受けている品種がこのほかに197品種ある。
これまで、海外での品種登録が進んでいない原因としては、①我が国のほとんどの育成者権者は国内や県内での普及を想定しており、海外への展開を考えてこなかった、②育成者権者に海外への流出実態あるいは流出リスクなどの十分な認識がなく、知的財産として保護が必要であるといった認識が低かったこと、③外国への出願に係る手続などの情報が十分でなかったこと、このような要因があって、このような現状になっていると認識をしている。
山田
育成者権者の方が外国で使われることを想定していなかったとのことだが、今のように、日本の品種が、世界で評価をされるようになると、そのようなことも十分念頭に置いて対応していく必要がある。
7 海外での種苗登録をどのように進めるのか
山田
農林水産省として、我が国の優良品種を守るために、積極的に海外での種苗登録を推進することが大事ではないかと思うが、その点を伺いたい。
太田豊彦 農林水産省食料産業局長
日本品種の海外流出を防止するためには、①種苗法を改正し、海外持ち出しを制限するとともに、これと併せて、②意図しない流出が生じた場合には育成者権を行使できるように海外で品種登録をすることの両面から取り組むことが重要だと考えている。
令和2年の農水省の補助事業の調査により、日本で品種登録されている名称と同じものが36品種あることが、中国・韓国で分かったので、日本の品種の流出のリスクは大きいと考えている。
他方、海外での登録品種が進んでいない状況にあるので、農林水産省としては、このような流出リスク情報を国内の育成者権者と共有をしながら、我が国の優良な品種を守るために、引き続き知的財産保護の意義の意識啓発を進めるとともに、海外での品種登録や侵害対応などについて支援をしていきたい。
山田
ありがとうございます。不安を持っている方もまだたくさんいらっしゃるので、しっかり制度の説明をしていただきたい。
【参考人の意見陳述要約】
有限会社矢祭園芸 代表取締役・全国新品種育成者の会 前会長 金澤美浩氏
私たち個人育種家等の立場としては、長年いろいろと時間と経費を掛けてきたものを、今の現行の中ではその部分の権利をリターンすることができないものもたくさんあります。この辺を何とか、花や野菜のような形で、この果樹の部分を何とか是正していってもらうことが私たちの長年の果樹育種農家の夢ですので、何とかお願いしたい。
公益社団法人 全国愛農会 会長・家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン 代表 村上真平氏
(苗や種苗が)外国へ出るとき、今回の法律でそれを阻止できないことが分かっているにもかかわらず、段階的に農民の種や種苗を使うということ、この当たり前の行為を止める、それがどういう意味なのかをよく考えて皆さんに審議していただきたい。
【参考人に対しての質問事項】
8 輸出あるいは作成した種苗が外国で使われていくことが、日本の農業の発展にどのようにつながっていくのか。
山田
今回の種苗法の改正は、日本の農産物をできるだけ外国へ輸出をしていく、これを進めるために、日本の品質の良さ、農産物の品質の良さ、おいしさや美しさを守っていかなくてはいけない。その観点から、この種苗法の改正をして、権利として守っていくことが主眼になっている。
日本の農産物を輸出していく。金澤さんの話では、開発された種苗がアメリカやヨーロッパで販売されている話もありましたが、輸出あるいは作成した種苗が外国で使われていくことが、日本の農業の発展にどのようにつながっていくのか、その辺の考えがあれば、金澤さん、村上さんの話をお伺いしたいと思います。
有限会社矢祭園芸 代表取締役・全国新品種育成者の会 前会長 金澤美浩氏
まず一つは、元々の、官といいますか、国とか県が作られた息の長いものの育種というのは、ほとんど果樹研とか、独立行政法人の中でやられていたかと思います。そうすると、今まで戦後、産めや増やせの増産という形で、それにまつわるようなところでどんどんと農家の生産性を上げるための品種開発をされて、国の食べるものの部分の満足度を押し上げてきたと思うのです。けれども、今、飽食時代、なおかつ個人の育種家さん、我々、花の場合は、メーカーさんが主導的にそういった形での、平成元年くらいから酒関係のメーカーなどが参入してきて、そういう流れの中でのきちっとした法律的な解釈をされてきているので、私たちはそういった部分に対して、それにのっとって今花業界は来ていると思います。
ただ、果樹的な部分の場合は、開発から生産までの期間が非常に長くて、その中でやられている部分があって、個人育種家の場合は、それに対しての、一本売って、あとは自己増殖、現在のように高接ぎ高接ぎでどんどん増えて、増やさせてしまう。こういう現状においては、開発していた今までの開発時間だとか、そういうコストの部分もどこでもペイできないというところが強いわけで、そういった現況を今改善してもらいたいです。あとは海外との部分は、絶えず海外のパートナーをつくりながら、今度は逆に、海外もこちらの部分を、信用度合いがある程度持たれて、お互いキャッチボール、いつも受け側ではなくて、そういう形の情報、それからそういった共有の仕方、そういったものもよく学べるということですね。海外での取引の部分の役割分担も、お互いに、私から行けば向こうからも入ってきます。そういう流れの中での新しい品種の交流、交換というものもありながら、発展的に、こういったグローバルな今の世の中になってしまったので、内需というばかりではなくて、そういう流れも含みながら全体的な一つの流れがそういう形に今なってきて、花の場合は良好な状態になっております。
公益社団法人 全国愛農会 会長・家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン 代表 村上真平氏
今回の改正は海外に出さないためだということを随分言われております。そして、シャインマスカットなど幾つか代表して、ほかの国に行って広がっているという。そのことは国益の損失だという話も聞いております。ですが、今、金澤さんが言われた、自分の作った品種は海外でも登録をしている。そういう形で、すでに今の現行法の中できちっと守っておられる。
実際、衆議院の話も全部読ませていただきましたが、皆さんも、今回の種苗法で海外に輸出、出ていくのを止めることはできないことはよく分かっていると思うんですね。そうすると、まるで農民がそれを出した責任者であるかのように、具体的な例がないのに農民のそれを止めるという言い方に今回の僕は問題を感じるんです。
本気で、海外にシャインマスカット、いろんなものが、作ったいいものが出ていかない、まあ、出ていってもそれに対するロイヤリティーが払われることを考えるならば、政府がそういうものに対して、海外で登録するものをサポートする、そういうことをするべきでしょう。それなしにこんなことを、それを止めることはできないし、どこから出ていくか分からないけど農民のやつから出るかもしれないから止めようみたいな話は、全くもって裏に何があるんだと言いたくなってしまうのが僕の正直な気持ちです。
9 農水省のヒアリングでは、外国人から育種してきた品種を売ってくれと言われて断ったという事例が聞かれる。現場の話としてそのような話があったか伺いたい。
山田
お二人の話よく分かりました。今日の午前中の議論でも農家の方に責任を押し付けるなという議論もありますという話があって、私もそのとおりだと思うのですが、農水省がヒアリングをすると、中国のバイヤーがやってきて売ってくれと言ったので断ったとか、それから外国人から県の育種してきた品種を売ってくれと言われて断ったという、そのような事例が何件も聞かれるんですね。それでお断りをしている人たちがこんな話あったよということだと思うのですが。
現場の皆さんで、現場、金澤さんも村上さんも、多分いろんな会のメンバーの方もおられると思うのですけれども、そういうアプローチが今まであったのかなかったのか、あるいは何かこんな話聞いたよということがあれば、もちろんその農家の方が悪いというわけではなくて、断っておられる方々だと思うのですが、そのようなことがあるのかどうか、現場の話をお伺いできたらと思います。
公益社団法人 全国愛農会 会長・家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン 代表 村上真平氏
やはり、その契約以外の違法増殖という部分が一番問題で、許諾をせずに増殖されてしまうところが一番我々育種家とすれば大変なところだと思っております。意外と自分たちも過去においてそういうところが、育種法などを垣間見て、研修などに行ってそういう部分のノウハウなどを頭に入れてくることはありますが、現物を持ち去られたというのは往々にしてあります。
それと、苗作り等、その育種家と分業化されているものですから、そういう流れの中での、例えば増殖をするプロパゲートをしていただくところから出ていったりすることも結構あります。だから、そういう流れの中でこういった部分の認識を全体的に考えていかなければ難しい問題かなと思っています。
有限会社矢祭園芸 代表取締役・全国新品種育成者の会 前会長 金澤美浩氏
御質問の、そういうものを分けてくれないかとか言われた人が、僕らの友人とか一緒にやっている人の中にいるかということに関しては、今のところはありません。そんなにお金になるようなものを作っていないからだからかもしれませんが、それについてはありません。
山田
現場の話として、そのようなアプローチが結構あって、そこから流出していることもあるのかなということもありましたので、ちょっと実情、何かそういう話があるのかお聞きをしたのです。
10 種苗登録されたものについて許諾が必要になる制度について、育種家の立場から見て、どのように評価されているか。
山田
金澤さん、ご自分でいろいろ開発されておられますが、一方で、今度の制度改正、法律改正は、今まで自家増殖を種苗法の対象にしていなかったものを許諾していただいて、在来種あるいは一般のものは別に今後も大丈夫なのですが、種苗登録されたものについて許諾が必要になる制度ですけれども、育種家の立場から見て、その自家増殖が今までは許諾が必要でなかったものが、許諾が必要になるということについて、育種家の立場から見てどのように評価されているかをお伺いしたい。
有限会社矢祭園芸 代表取締役・全国新品種育成者の会 前会長 金澤美浩氏
許諾しなくても済んでいた部分が今後許諾するとなると、農家さんから見れば少し違和感はあると思います。けれども、実際、今後一つそういう流れの中できちっとした形でやっていただくことが自分たちにとってみれば、全国のネットの中で自分たちのものが違法増殖されているのか、されていないのか、被害を受けているのか受けていないのか、そのようなこともさまざまな形での情報源として得ることができるので、これからはそういう形で許諾を推進していきながらやっていくことが次の新しい品種を作る一つのエネルギーになっていくと思っています。
11 自家増殖と農家の負担について伺いたい。
山田
村上さんは今の自家増殖についてのお立場は先ほど述べられたのでよく理解をしています。自家増殖の話と、もう一つは農家の負担の話が出ていて、苗代が高くなるのではないかとか、という話もあります。午前中の農水省の説明では、それはごく僅かで、大規模な10ヘクタールぐらいの農家でも、稲の農家なら千数百円だという話があったのですが、この自家増殖と併せて、農家の負担ということについて何かお考えがあればお願いします。
公益社団法人 全国愛農会 会長・家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン 代表 村上真平氏
10ヘクタールくらいで様々なもの、特に、苗を自分で作ってやるものでも、例えばジャガイモやサツマイモみたいなもの、また登録されている関係の、普通の栄養成長できるものですよね、そういうものというのは登録されたものだから、それをもう一回使うのが駄目だという形が、許諾が要るという話になると思うのですが、僕はその辺は同じ考えです。
というのは、当然負担は上がります。農家というのは、今本当に農家やる人が少なくて、どんどんどんどん農家人口が減っていく。一番その理由は、働けど働けどお金にならないからですよね。そこに加えて、そのような形で負担が増える。特に栄養成長させるものは非常に増えますね。それは農家の多大な負担になると僕は見ています。
山田
ありがとうございました。