平成28年12月8日 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会

12月8日、「環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会」(TPP特別委員会)が開催されました。11月14日、11月24日の質問に続き、異例の3回目の登壇です。当日は集中審議で、テーマは「TPPと農林水産業、食の安全等」です。 NHKでテレビ中継されました。
下のテーマをクリックすると、そのテーマの質疑・答弁の該当箇所にとびます。
なお、正式な議事録については参議院ホームページ「会議録情報」をご参照ください。


【質問事項】

1.TPP協定の国会承認を進める意義(TPP協定に代わる選択肢)
2.「米国離脱」表明後の対応
3.TPP関連対策の継続実施①
4.TPP関連対策の継続実施②


山田
今日、12月8日は真珠湾攻撃の日である。その日に日米間で懸案になっているTPP協定の審議が行われる。近々、総理は真珠湾に訪問されると聞いているが、日米の友好関係が深まることを大いに期待する。私にとって、本委員会で3回目の質問になる。これまでの質問もまとめながら伺いたい。


1.トランプ氏との会談について

山田
これまで、この委員会では、与野党共に参議院らしい、専門的で深い内容の質疑が行われてきた。その中で、与野党から、TPP協定に代わる選択肢についての質問があった。この点について総理に伺いたい。
第1の選択肢は、トランプ氏が主張する日米2国間の交渉である。これは、本委員会のほとんどの委員が、与野党を問わず、反対ではないかと思う。
その理由は、①日本の農林水産業に大きな影響があるのではないか、②食の安全、安心、例えば食品の添加物であったり、遺伝子組換え食品であったり、食品の表示に関連することですが、食の安全、安心が脅かされるのではないか、③国民皆保険制度や公的医療保険制度が崩壊するのではないか、といった懸念があるからである。
しかし、このような懸念、はTPP交渉参加前に心配されていた事項と同じである。 「アメリカ・ファースト」を標榜してきたトランプ氏の下で、2国間交渉をした場合、このようなアメリカのむき出しの要求が表に出てくる。そのような意味では、この2国間交渉は大変危険なものではないかと思っている。この日米の2国間交渉はやはり回避すべきものである。
第2の選択肢は、アメリカを除く11か国でTPP協定のような協定交渉を開始することである。TPP参加国のGDPの6割を占めるようなアメリカが抜けた協定は、その価値が非常に小さくなるし、ガラス細工でできていると言われているTPP協定の、大きなパーツであるアメリカを除いて成り立つのかという問題もある。そのような意味で、安易に11か国でやればいいということでもない。
第3の選択肢は、「立ち止まって考える」という意見である。立ち止まって考えるのもいいが、その後どうするのかが大事。立ち止まったままなら、結局、何もしないことになる。①TPP協定も進めない、②11か国交渉も進めない、③2国交渉も進めない。つまり、これは日本とアメリカの間でEPA、FTAという、自由貿易協定、経済連携協定がない状態が続くことになる。
我が国がアメリカの市場で、ほかの国よりも不利な条件で、例えば韓国などに不利な条件で競争をしなくてはいけない状況になる。我が国の経済にとってはマイナスであるということは間違いない。そのような状況から抜け出すために、最も避けなければならない2国間協定に入っていくことになりかねない。すなわち「立ち止まって何もしない」ことは、やはり危険な選択肢である。
総理は、TPP協定の国会承認などこのような国内手続を進める意義について、①自由貿易体制を守っていくという我が国の姿勢をはっきりさせる、②TPP協定で結実した新しいルールを世界のスタンダードにしていく、と強調されている。まさにそのとおりだと思う。
それに加えて、ほかの選択肢を考えても、今の時点では、「TPP協定について国内での手続を進めて、諸外国にも発効のための働きかけをする」 この方針が一番いいと考える。他の選択肢と比較するのは難しい、という話もこれまであったが、総理の見解を伺いたい。

安倍晋三内閣総理大臣
山田委員からは様々な選択肢について、分かりやすく解説をしていただいた。この委員会で審議しているTPPについて、米国の政権移行に伴い状況は大変厳しくなっている事は事実であるが、我々はあくまでもこのTPPの国内手続を進めていく、批准すべきだと、このように今でも強く確信をしている。
2国間のFTAでいけばどうかという議論がある。それについて、既に山田委員から、その点についての課題等について話をしてもらったところである。多国間でやる意味を述べると、製造業ではサプライチェーンが幾つかの国にまたがっているのが、今の現状である。幾つかの国にまたがってサプライチェーンを構成している中で、TPPのような12か国が参加する枠組みによって、コストを一気に引き下げていくという大きなメリットがある。一国一国のFTAであれば、それは望めないし、また中小企業にとっても、一々国別に煩雑で複雑な手続等に対応しなければならない。ところが、TPPであれば一つのルールで済む。これは中小企業にとっても大きな負担の軽減になっていくという利点もある。何よりも、普遍的価値を共有するこの12か国が集まって一つの、21世紀型の模範となるルールを作っていくところに大きな意義がある。
そして、立ち止まって考えるべきかどうかと、このような考え方もあるという話もいただいたが、ただ、立ち止まったままでは駄目だ、まさにそのとおりである。そして、米国のトランプ次期大統領があのようなメッセージを発する中で、なぜ11か国がどこも国内手続を進めるのをやめようと言わないのか。それは、このTPPのルールこそ21世紀の新しい貿易のルールとすべき、という固い信念があるからで、その中で、自由民主主義国家の中で第2位の経済力を持つ日本が、これをやめてしまえば、そうした意思もくじかれてしまうと思う。
TPPは戦略的、そして経済的な大きな価値がある。そして、日本がTPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があることを国家の意思として示すものであり、今後の我が国の通商戦略の基盤となる。これは他の交渉を加速させる力にもなっていくと、このように考える。

山田
ありがとうございました。多国間協定の意義なり、サプライチェーンの意味、話をいただいた。


2.「米国離脱」表明後の対応

山田
TPPの国内手続を進めているが、トランプ氏がTPP交渉から離脱をすると言っている。離脱をすると言っている以上、TPP協定はもう死んだのではないか、死んだも同然だ、無駄な国会審議じゃないか、という人がいるが、そうではないと私は思う。「離脱」の意味を明らかにしておく必要があると思う。
TPP協定は、今年の2月に各国の閣僚が集まって、ニュージーランドで署名をした。ここで、一字一句まででき上がった。しかし、まだ発効していない。これは、「料理はでき上がったが、冷蔵庫の冷凍室に入れてあって、これを解凍して食卓に並べられるのを待っている。その段階、いつ解凍して食べるか、」という状況になっていることだと思う。
トランプ氏が大統領に就任して、その日かどうかわからないが、「TPP協定から離脱をする」と言っているが、そこで別に消滅してしまうわけではなくて、法律的に考えれば、署名が終わっていないような段階であれば、交渉から離脱をする、交渉から席を立って出てくるということはあると思うが、既に署名が終わっている。しかしまだ発効していない。発効していない協定から脱退することも、できない。各国ができるのは、まさに発効のための国内手続をするか、あるいはしないか、というだけの選択である。外務大臣にこの点を確認したい。

岸田文雄外務大臣
TPP協定、各国の署名は終わっているが発効していない状況にある。そして、TPP協定上、発効前の離脱、脱退に係る規定、これは存在しない、というのが協定のありようである。よって、TPPについて、トランプ次期大統領、は離脱を表明しているが、この「離脱」ということがいかなる行為を意味するのか、この点について予断を持って申し上げるのは困難だというのが実情だと思う。
ちなみに、米国が今後TPP協定を締結するために何が必要なのか、ということを確認すると、今後、貿易促進権限法、TPA法に従って米国の上下両院でTPPの実施法案が承認され、大統領が同法案に署名する、このような手続が必要であると承知をしている。
いずれにしても、我が国としては、TPPの重要性、意義をしっかりと今後とも粘り強く訴えていきたい。

山田
TPP協定に署名をした12か国が、手続を終了しなければならない期限が、協定上あるのかどうか。これは、私は「期限はない」と理解をしているが、石原大臣に確認したい。

石原伸晃内閣府特命担当大臣
協定の中に、期限を定めるというような規定はない。あくまで、TPP協定の第30章の第5条に、協定の効力発生の要件についての規定があるだけである。

山田
まさに、TPPという料理はできていて、冷蔵庫の冷凍室に入っている。これを各国が手続をして引き出して食べるかどうか、ということになっている。TPPについては議論する意味がない、ということではなくて、TPPの価値は十分あり、さらに国会でよく議論をしていくことも大事なことだ。
前回、前々回質問したことも含めて、総括をしたい。①TPP協定については我が国経済に大きなメリットがある。そして国際経済についてもメリットがある。②各党が心配をしているような様々な懸念、例えば農林水産業に大きな影響があるのではないか、あるいは食の安全、安心、あるいは国民皆保険制度、そのような様々な心配事については、これまでの交渉あるいは政府が取ろうとしている対策によって、十分小さなものになったか、あるいは全然関係のないTPP交渉、TPP協定以前の問題を心配されている方とか、そういうことであるが、TPP協定自身にはそのような懸念はなくなっている状態である。
③トランプ氏が離脱を宣言したとしても、そこでTPP協定が全くなくなるわけではなく、これからまたアメリカに意見を変えてもらうことも必要で、各国に働きかけていくということも必要だ。我が国が優先して、率先してこの国会で手続を終えることが大事なことだ。


3.TPP関連対策の継続実施①
山田
トランプ氏が大統領当選してTPPの発効は容易でなくなったということはあるが、だからといってTPP関連対策が必要なくなったのかというと、そのようなことはない。
TPP交渉の結果、政府は、総合的なTPP関連政策大綱を決定した。この中身は3つある。①第一が「新輸出大国」を目指すということ、②第二番目が「グローバル・ハブ」、つまり貿易・投資の国際的な中核拠点を整備していこう、③第三番目が「農政新時代を開いていく」、この3つである。
これらのことは、我が国の産業が海外に展開をしていく、事業拡大をする、生産性向上をしていく、農林水産業の成長産業化を促す意味で、TPPの発効が契機となりながらも、しかし新しい日本を築いていく、そのような対策である。TPP協定の発効が、厳しい状況下にあっても、この大綱やこれに関連する予算措置は、基本的にしっかり実施していくものと考えるが、総理の考えを伺いたい。

安倍晋三内閣総理大臣
昨年11月に決定をした総合的なTPP関連政策大綱は、TPP協定を見据えて、輸出促進、対内直接投資の活性化、そして農林水産業の成長産業化といった、TPPによる貿易・投資促進の効果を真に我が国の経済再生、地方創生に直結させるとともに、TPPに関する国民の不安を払拭するために必要な政策の目標を提示したものである。
これらは、いずれも我が国にとって経済の生産性を高め、我が国を新たな成長軌道に乗せるために必要な政策である。TPPは、アジア太平洋の世紀の幕開けを告げるものであり、その先にはRCEP、さらにはFTAAPというアジア太平洋の国々とともにもっと大きな経済圏をつくり上げていくことが期待されている。したがって、政策大綱に基づく政策は、言わば国家百年の計として中長期的な視点も含め実施していく必要があるものである。
今後とも、この政策大綱で示された政策目標に沿って政策を展開することで、各国との経済連携の効果を生かして経済再生に取り組んでいきたい。

山田
ありがとうございます。中長期的な目標ということで取り組むという話でした。


4.TPP関連対策の継続実施②
山田
農林水産業について伺いたい。平成27年度、28年度の補正予算でそれぞれ3000億円余りの予算を確保し、農林水産分野での改革に取り組んでいくことになっている。地域でも非常に期待が高い政策である。また、今年の11月には「農業競争力強化プログラム」も決定された。これから農業資材の価格の引下げや流通加工分野の改革に取り組んでいこうという内容、あるいは「収入保険制度」の創設なども盛り込まれている。こうした施策を引き続き実施していっていただきたい。農水大臣の決意を伺いたい。

山本有二農林水産大臣
TPP関連政策大綱に、体質強化、経営安定、さらに成長産業化、こうした提案が盛り込まれており、それを受けて、補正予算が3000億以上、27年、28年にわたって獲得することができた。これによって、我が国農業の体質強化がかなり図られてきた実感を得ている。
その上に、この度農業競争力強化プログラムを設定したので、これによって、農家自身の努力だけでは解決できない構造的な問題に取り組むことができたと思っている。
そのような意味で、本プログラムの施策の実現に全力を尽くし、農業や関連産業、国際競争力の強化、効率的な流通加工構造の確立し、新しい農業が実現できるように努力したい。

山田
ありがとうございました。このTPP交渉は、民主党政権の菅総理が検討開始をするということを表明され、野田総理のときに交渉参加に向けた協議を開始しました。そのバトンを受け継いで、安倍総理がゴールに到達したということだと思っている。このような経緯も踏まえて、是非、今国会で承認、そして可決をしていただきたい。