平成28年11月14日 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会

平成28年11月14日 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会
11月14日、「環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会」(TPP特別委員会)が開催されました。
この日よりTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の承認案と関連法案の参議院で審議入りをしました。
議員はトップバッターでの質問で、質疑の様子はNHKでテレビ中継されました。
下のテーマをクリックすると、そのテーマの質疑・答弁の該当箇所にとびます。
なお、正式な議事録については参議院ホームページ「会議録情報」をご参照ください。


【質問事項】
1.TPP協定の発効など
(1).保護主義が強まる中で我が国の貿易政策の方向
(2).アメリカ大統領選挙の結果の下でも国内手続きを急ぐ理由
2.TPP協定の経済効果
(1).TPP協定の日本経済に及ぼす効果
(2).交渉開始前の安倍総理とオバマ大統領との合意
3. 農林水産物への影響
(1).生産減少額
(2).コメ
(3).野菜・果樹
4.TPP協定に関する懸念事項
(1).食の安全性(遺伝子組換え食品、農薬や食品添加物、食品表示)
(2).ISDS条項①
(3).ISDS条項②


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1.TPP協定の発効など
山田
TPP協定の質疑についてトップバッターということで、大変いい機会をいただいた。感謝を申し上げたい。
私は、参議院議員になる以前、国家公務員をしていた。農林水産省に勤務していた当時、民主党の菅総理、野田総理の時、TPP交渉に参加できないかどうか検討していた。私は、「農林水産審議官」という役職で、農林水産省で国際交渉の事務方の責任者という立場だった。民主党政権の下で交渉参加の可能性について模索し、そして自公の連立政権、安倍総理の下で交渉に参加、そして合意に達し、現在、国会で審議をしている。
この委員会には、与野党を問わず、TPP交渉に関わってきた方がたくさんいる。また、内容をよく知っている方もたくさんいる。これまでの経験も生かしながら、内容のある、また分かりやすい審議をしていきたいと思っている。

(1) 保護主義が強まる中で我が国の貿易政策の方向
山田
日本は、これまでEPA、FTA、自由貿易協定、そして経済連携協定を推進してきた。その中でも特に経済規模の大きないわゆるメガ協定の交渉を同時並行的に進めてきたと思っている。一つは、太平洋を取り巻く12か国が構成員となって交渉をしているこのTPP協定(資料1参照)、そしてもう一つは、RCEP(東アジア地域包括経済連携)がある。RCEPは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の10か国、そして日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、そしてインド、16か国が構成員となっている交渉である。そしてまた、日本とEUの間で行っている日EU EPA(日EU経済連携協定)、これは、EUは大変大きい経済圏であるが、こういったメガ協定を並行して同時に進める、このような交渉をやってきた。これはそれぞれの交渉が好影響を与えてお互いに促進していく。このような面がある。そのようなことで進めてきた。
このような通商政策を進める中で、今、先週、アメリカの大統領選挙があり、トランプ氏が当選した。トランプ氏は、TPP協定だけでなくてNAFTA(北米自由貿易協定)についても賛成しないと発言をしている。トランプ氏の当選でTPP協定の発効について懸念が広がっている、またイギリスがEUから脱退をすることもあって、保護主義が台頭してきているのではないか、このような懸念もある。
そこで、今後、我が国の通商政策、これをどのように進めていくのか、そして、この見直しが必要なのかどうか、この点について基本的な方針を総理に伺いたい。

安倍晋三内閣総理大臣
戦前は、まさにそれぞれの国の版図の広さが経済力につながっていった。そして、日本は敗戦によってその版図の多くを失った。しかしあの敗戦、荒廃した国土から見事に日本を立ち上がらせ、そしてGDP世界三位の国にした。版図を多く失ったにもかかわらず、なぜそれが可能となったか。それは、自由貿易の恩恵と言ってもいい。自由で公正な貿易を堅持し、そしてそれを発展させていく、これこそが、大企業のみならず、中小企業ひいては労働者や消費者にとって適切な経済的機会をつくり出すものであり、世界経済の成長の源泉と言ってもいいと思う。
しかしながら、TPPを含め、グローバル化の中での自由貿易に対しては、多国籍企業のみが利益を得ているとの誤解があるのも事実である。このような誤解が広がれば自由貿易に対する支持が揺らいでしまい、各国が国民の理解と支持を得て自由貿易を推進することによって保護主義の蔓延を食い止めなければならない。戦後、自由貿易体制の下で経済成長を遂げてきた我が国こそがその先頭に立たなければならない。
国会でTPP協定が承認され、整備法案が成立することで、自由貿易を主導する我が国の決意と結果を出す力を世界に示すことができる。これはTPP以外の通商交渉も刺激をし、加速させ、保護主義の蔓延を食い止める契機となるものである。TPP協定は、厳しい交渉を経て、我が国にとって高い戦略的、経済的価値を持つものとなった。
米国が政権交代期にある今、我が国こそがその早期発効を主導しなければならない。TPP協定の国会承認により、再交渉はしない、早期発効を目指す、との立法府も含めた我が国の意思が明確に示される。今後、様々な機会を通じて米国並びに他の署名国に国内手続の早期の完了を働きかけていく考えである。
また、TPP協定に結実した新たなルールは、TPPにとどまらず、日EU経済連携協定、RCEP、さらには、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)などにおけるモデルとなるものであり、まさに21世紀の世界のスタンダードになっていくことが期待される。いずれにせよ、自由で公正な自由貿易こそが我が国の経済を発展させていくものである。

山田
どうもありがとうございました。 自由貿易を進めていく、保護主義の蔓延を防いでいく、またTPP協定の意義についても説明があった。自由貿易の推進、保護主義の蔓延を防いでいく、そして経済連携協定については並行してそれぞれ進めていく、この方針は基本的には変わらないということでした。このような基本方針の下でTPP協定について我が国としてどう対応していくのかということだと思う。

(2)アメリカ大統領選挙の結果の下でも国内手続きを急ぐ理由
山田
週末の新聞などの記事を見ると、トランプ氏の当選によってTPP協定の発効は非常に困難になったのではないか、と言われている。一方で、トランプ氏は通商政策には必ずしも精通しているわけではない、理解を求める可能性も十分あるのではないかという意見もある。総理は、17日にニューヨークでトランプ氏と会談をされるということである。ここで会談の発言についてお聞きするわけにはいかないが、トランプ氏にはこの経済連携協定、TPPの重要性について御理解をいただけたらと思っている。
さて、このアメリカの大統領選挙の結果、TPPはなかなか厳しい局面にある。しかし、先ほど話があったように、我が国の通商政策、これまでやってきたことを更に進めていくことが基本的な立場である。今この時点でTPP協定の国内手続を進めることの意義について、石原大臣から改めてお答えをいただきたい。

石原伸晃内閣府特命担当大臣
アメリカの大統領選挙をめぐって、トランプ候補が次期大統領に決定したことにより、様々な報道があることは私も十分承知をしている。
しかし、TPP協定は、21世紀の新たな共通ルールをこのアジア太平洋、パシフィックにつくり上げる、自由で公正で巨大な一つの経済圏を構築するという大きな目標がある。これについてはアメリカも大きな恩恵を被る。さらに、その地域が経済的にも政治的にも不安定な状況の中で、私たちは共通な価値観を持っている。自由、民主主義、基本的人権、法の支配を共有する国々、地域が経済のきずなを強めることによって、その輪を広げていくことで更なる地域の安定を図るといったような戦略的な意義というものも十分にあると思う。
国会で協定が承認され、この整備案が当委員会で成立すると、自由貿易を推進し、TPP協定の早期発効を目指すべくという立法府の明確な意思が明らかになる。我が国が主導することにより、早期発効に向けた機運を高めていく、政府全体として様々な機会を通じて米国並びに署名国に国内手続の早期完了を働きかけていく考えには何ら変わりはない。そのためにも、今国会での協定承認と整備法案の成立を目指していきたい。
TPP協定の各規定の内容の趣旨、解釈等については、引き続き当委員会で丁寧に説明に尽くさせていただきたい。

山田
ありがとうございます。TPP協定の意義、そして国内手続を進めていくという話でした。


2.TPP協定の経済効果
(1)TPP協定の日本経済に及ぼす効果
山田
TPP協定の経済効果について話をしたい。このTPP協定、太平洋を取り巻く12か国で構成をしている、そして世界のGDPの4割近くを占める大きな経済圏を形成するものである(資料1を参照)。
このTPP協定については、先ほどFTAAPの話もあったが、APECの21の国・地域がこのFTAAPを目指してこれから活動をしていくということで、その原型となるもの、つまりAPECの21か国には開かれた、参加国が今後増えていくような意味合いのある協定である。
TPP協定が日本経済にどのような効果を及ぼしていくことを意図しているのか、総理の考えを伺いたい。

安倍晋三内閣総理大臣
TPPはこのアジア太平洋圏に4割のGDP、4割経済圏を新たにつくり出す。そこでは自由で公正な貿易・投資ルールがつくり出され、適用される。世界の自由で公正な貿易・投資ルールを牽引していく役割もある。
大筋合意の後、韓国、台湾、インドネシア、タイ等がTPP参加に強い関心を表明した。TPPはいわゆる昔のブロック経済とは違う、開かれている。開かれた新たな経済圏と言ってもいいだろう。この我々が高い志を持ってつくり上げたこのルールにのっとって、貿易をしていこうという国であれば受け入れていく。
TPP参加に強い関心を表明した国々があり、TPPは巨大市場の求心力で当初の12か国を超えて大きく拡大していくことが期待される。日本経済が国内の人口減少を乗り越えて、中長期的に力強く成長していく基礎になる。残念ながら、日本の人口は減少をしていく。人口が減少していくということは消費者も減少していくのであるが、この12か国、またそれ以上に広がっていけば、そこでは同じようなルールで様々な仕事ができることになれば、商売もできる、物を売っていくことができることになれば、日本の消費者は減っていくが、このTPP圏内の消費者は増えていくことが期待される。
TPPにおいては、日本以外の交渉参加国の関税はほぼ100%撤廃される。特に、工業製品の即時撤廃率は品目数ベースで約87%に及ぶ。新たなルールの下では、付加価値が正当に評価されることになる。これまで様々なリスクを懸念してきた地方の中堅・中小企業や農業者も安心して海外展開できるようになる、域内のどこで生産してもTPPの低い関税が適用され、国内にいながらにして海外進出ができるようにもなるわけであり、サプライチェーンの一環として日本にいながらその一翼を十分に担うことができるようになり、中小企業、外へ出ていくと、果たしてルールを途中で変えられるのではないか、あるいは模造品や海賊版がどんどん出されてしまうのではないか、頑張ってしっかりとつくり上げた新しい付加価値が、ほかの国に盗まれてしまうのではないかという心配がこの圏内ではなくなっていくわけであり、むしろ中小企業にとってチャンスが出てきたと言ってもいい。
TPPのメリットは、直接輸出する企業にしか及ばないのではなく、輸出企業と取引のある企業、そこで働く人々にも及んでいくことになる。安倍政権は、輸出拡大を通して得た大企業の収益が全国の津々浦々の下請の中小企業の収益として波及していくように国内の取引慣行の適正化に取り組んでいるわけであり、引き続き進めていく考えである。各企業における賃上げも引き続き働きかけを行い、国内経済の好循環を促していく考えである。

山田
ありがとうございました。TPP協定が発展性のある協定である、そして日本経済に大変大きな好影響を与えるという話でした。

(2)交渉開始前の安倍総理とオバマ大統領との合意
山田
元々、このTPP交渉、この協定の原型というのは、全ての関税を直ちにゼロにするという、非常に硬直的なルールで交渉が開始をされたものである。このような全ての産品について直ちに関税を撤廃する、ゼロにするという前提は、日本経済だけではなく、様々な国の経済について急激な変化、変更を及ぼすものであり、また混乱を生ずる可能性もあった。
民主党政権の下で、交渉参加の可能性を随分模索をしたわけであるが、結局参加に踏み切らなかったのは、この硬直的なルール、全ての関税を直ちにゼロにすることに対する懸念があったからだ。
しかしながら、平成25年2月に安倍総理がオバマ大統領との間で、両国間にはそれぞれ貿易上のセンシティビティー、困難な事項があるということを確認されて、この硬直的なルールも交渉次第で変更できるんだという見通しを立てた、その中で交渉参加に踏み切ったということであった。各国がそれぞれ、やはりそれぞれの国のセンシティビティー、困難な問題を抱えている、そして、それを踏まえながら交渉を行うということで各国が受入れ可能な合意に到達できた。
この日本の交渉参加の前に安倍総理とオバマ大統領の間で柔軟性を確保するような合意ができたということが、結局最終的に各国が合意可能なものとして合意できた、妥結できたということだ。
先ほど総理から工業製品の関税撤廃率について話があった。この資料では、全品目の関税撤廃率、日本は95%である(資料2を参照)。これまでのEPA、FTAに比べて高い率ではあるが、かなり日本の産業にも配慮した中身、そして農林水産物品は82%で、どこの国よりも関税撤廃率を低く抑えることもできた。つまり、それぞれの国の柔軟性に配慮した交渉の中で、我が国については、我が国の産業、農業や第一次産業に配慮しながらうまく交渉ができたと思う。このような安倍総理とオバマ大統領の合意、そして最終的な決着が得られたこのことについて、総理の感想あるいは意見があれば伺いたい。

安倍晋三内閣総理大臣
安倍政権が誕生した当時、既にTPP交渉は開始から2年が経過をしており、その間のことは委員も農林水産審議官として、責任者として経緯はよく御承知だと思うが、当時、全ての関税の撤廃を目指して進められていたのは事実である。
しかし、日本にとって農は国の基である。農業に従事している皆さんが毎日土と向き合い、その結果、私たちの食を支え、地域を守り、環境を保全してきたと言ってもいい。同時に、日本のふるさと、伝統を守り、さらには国柄を守ってきたのではないか。
この国柄を守ることとTPPに参加すること、これを両立させることはできないか、そのために私たちは自らその道を切り開いていくべきだと、考えたのである。この考え方の下、政権発足後間もない日米首脳会談におきまして、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することは求められていないことなどを直接確認した上で交渉参加の決断をした。
我が国は、交渉を主導することで農林水産品の約2割について関税等による保護を維持した。我が国以外はほぼ100%関税撤廃されるのであるが、我が国は約2割の関税等による保護を維持し、そして自動車部品の対米輸出額の8割以上の即時撤廃を確保したところである。
厳しい交渉を経て国益にかなう最善の結果を得て、TPPを高い戦略的、経済的価値を持つものとすることができたと考えている。

山田
ありがとうございました。TPP協定については、様々な懸念が様々なひとから出されている。その懸念について質問をしたい。私の受けた印象は、情報が不足しているのではないか、あるいは誤解に基づいた懸念なのではないかということである。
こういった誤解がどこからくるものかであるが、TPP交渉に日本が参加する以前、全ての関税を直ちに撤廃をしていくという原則があった。そして実際に参加してみないとどのような交渉が行われているのかもよく分からない、そのような中で様々な懸念がいろんな方面から出されたのだと思う。
このような交渉参加前の懸念事項は、交渉の決着によって、「そのようなことはない」ことがはっきりしているのであるが、その不安が依然として国民の中に残っている。元々あった不安がそのまま残って、今の様々な不安につながっているのではないか。この不安を解消すること、これもこの国会での審議の重要なテーマであると思う。


3.農林水産業への影響
(1)生産減少額
山田
農林水産業について伺いたい。交渉決着後の昨年12月に公表している資料(資料3参照)であるが、経済効果分析がある。農林水産物の生産減少額、1,300億円から2,100億円ということで分析をしている。一方で、交渉開始前、平成25年の3月に試算をしたもの、3兆円程度の農林水産物の生産額の減少があるとしていた。
交渉前と交渉後を比べると20分の1ぐらいに影響が減っている。なぜこのように生産減少額が少なくなったのか、農林水産大臣に伺いたい。

山本有二農林水産大臣
TPPと言っても、交渉前のTPP、そして交渉後のTPP、さらには国内対策を盛り込んだTPP、こうした3つの概念がそれぞれ独自に異動し、また評価をされているという懸念を持っている。その意味について、交渉前のTPPは全ての関税が即時撤廃されるということであって、追加的な国内対策も全くしない、ということであった。これを単純化して試算すると、3兆円の生産減少額があるという位置付けであった。
一方、今回の試算では、対象品目は前回同様であるが、交渉結果は既に明らかになっていて、関税撤廃の例外を2割獲得している。そして、そのほかにも長期の関税削減期間、あるいはセーフガード措置が獲得できており、交渉は最善を尽くされたと思っている。
さらに、国内対策は、総合的なTPP関連政策大綱に基づく国内対策があって、2度の補正を行った。それを踏まえて考えると、生産減少額は1,300億円から2,100億円になった。今後、国内対策を更に充実、加速していきたいと思っている。

山田
ありがとうございます。交渉の結果が反映され、そして国内対策の内容についても反映した結果、このように生産減少額が少なくなったということでした。政府はそれぞれの農林水産物の特徴、状況に応じながら交渉し、また対策を講じようとしている。次に、具体的に幾つかの品目について伺いたい。

(2)コメ
山田
コメについては、これも地域の、私の地元の方も、米がこれからどんどん入ってくるのではないかと心配をしている方がいる。米については、もう皆さん御存じのとおり、国内の消費量に比べて生産の能力が高く、生産調整を実施している。このような中で、アメリカそしてオーストラリアに輸入の枠を設定した。この両国合わせて最終的には最大で78,400トンの輸入枠になるということである。
国内の消費量約800万トンと言われているので、そのうちの1%程度に該当するのであるが、生産調整を実施していることもあって、国内農業への影響を遮断していくこと、これは非常に重要なことだと思っている。政府としてどのような措置を講じようとしているのか、大臣に伺いたい。

山本有二農林水産大臣
米は重要5品目の中の最大の懸案であった。その米については、枠外税率一キロ当たり341円の関税、これを維持することができた。この1キロ341円は60キロに直すと2万円なので、これで枠外で輸入されるということはほとんどあり得ない話となった。
そして、WTOの77万トンは既にあるが、さて、それ以外で米が海外から輸入される枠はあるのかと問われると、発効当初から3年間5.6トンあるが13年目以降7.8万トンになる。この7.8万トンの懸念である。7.8万トン入ると大変だというが、この枠は全てSBSである。SBSというのは、入札で、この入札に応ずるものがなければ、あるいは契約が成立しなければ、入ってこない可能性もある。
特に、このミニマムアクセス米は、SBSで入ってこない場合でも、輸入義務があるので、77万トン満額入れなければならないのであるが、この7.8万トンというのは、契約がなければ入れなくてもいいという、交渉結果となっている。
その意味では13年後であり、必ずしも入れなくていいというTPP枠である。そのような意味で、我々は、もし入っても、国内市場から遮断しよう、備蓄米として買上げる対策をしていき、その上、国内市場では価格が下がる懸念を払拭するようにしている。その意味において、米に対しては、私は万全の体制が取れたと評価をしている。

山田
それから、備蓄政策の見直しも含めて、この78,400トンについて、そのものはできないが、国内の生産があったものについて備蓄の見直しを行うということも聞いているが、その点についてはいかがか。

山本有二農林水産大臣
米は重要5品目の中の最大の懸案であった。その米については、枠外税率一キロ当たり341円の関税、これを維持することができた。この1キロ341円は60キロに直すと2万円なので、これで枠外で輸入されるということはほとんどあ現在、米市場は800万トンの規模である。そして、TPPで国別枠が7.8万トンの1%である。そして、この1%入れば、その分に応じて備蓄米で国内産の主食用米を買い取ることで、市場に需給というバランスの上において値段の変化がない、値段が生産者の心配から解き放たれるような備蓄運用をしたいと考えている。
山田
ありがとうございました。78,000トン余りの輸入枠が設定されるが、それに見合った量を国内から備蓄として買い上げることもやっているとのことである。

(3)野菜・果樹
山田
様々な品目がありますが、外国の農産品と差別化が可能なものもあるということだと思う。例えばリンゴだが、東京の大田市場ではキログラム当たり300円ぐらい、年によって違うが、そのような価格になっている。一方で、外国から輸入されるリンゴは例えば横浜の埠頭に着いたとき、これはキログラム当たり大体200円ぐらいである。これに関税が17%付いて230円ぐらいになって荷揚げされる。
この外国産のリンゴ、それから国産のリンゴが、例えば金沢のスーパーに出回るとした場合に、流通経費もあって、国産のものは例えばキログラム当たり500円ぐらい、そして外国産のものが出回るとすれば、200円のコストが掛かって430円と、このような価格でスーパーに並んでいる。
そして、しかし現実には、国内のスーパーマーケットで外国産のリンゴを見ることはほとんどない。価格が高くても日本のリンゴを日本の消費者の方は選ぶ。これが今の差別化ができる商品の現状である。
そして、例えば、金沢のスーパーマーケットで430円で売られるかもしれなかったリンゴが400円になった。そのときに、消費者は30円下がったから、国産のものから外国産のものに移るだろうか。そのことは、まずほとんど生じないだろうと私は思っている。
しかしながら、一部競合するリンゴについては価格が下がっていくかもしれない、そのことを評価して、農林水産省では3億円から6億円の生産額の減少の可能性があるという試算をしている。リンゴの国内の生産額は約2,100億円なので、この価格の低下、可能性のあるものは0.2%とか0.3%という、そのようなレベルの問題である。
しかし、リンゴ農家にとっては、それも心配であろうかと思う。国内で、しっかり国内対策を講じていく必要があるのもまた事実かと思う。どのような国内対策を講じていくつもりなのか、農水大臣に伺いたい。

山本有二農林水産大臣
御指摘のように、リンゴは品質においても、またその信頼、ブランド化においても、国内産リンゴというのは圧倒的なものがある。
実際、74万トン国内で2013年生産されており、輸入は2,300トンである。したがって、国内生産の0.3%しか輸入されていないという強みがある。しかしながら、それに甘んずることなく、更に産地パワーアップ事業で生産者の輸出力あるいは品質の下支えをさせていただきたいと思っている。
まずは、省力的な栽培体系への転換、あるいは品質向上を図るための改植及び未収益期間への支援、そして作業効率化のための園内道の整備、そして濃縮果汁から高品質なストレート果汁への転換のための施設導入、そして農産物加工処理施設や選果施設の整備、高付加価値化や生産コストの削減、このような目標を掲げて取り組みたいと思っている。

山田
どうもありがとうございました。交渉の結果を受けて国内対策をしっかり講じていくことで、農業についての不安も解消されていくと考えております。それぞれいろいろな品目について交渉方針を決め、そして国内対策を講じているとのことである。


4.TPP協定に関する懸念事項
(1)食の安全性(遺伝子組換え食品、農薬や食品添加物、食品表示)
山田
農業についての様々な対策について聞いたところだが、それ以外にも様々な懸念が表明されている。
私の地元の金沢でお母さん方とお話をする機会があった。一番心配をしているのは、食品の安全性についてだった。① 現在、日本で使用が禁止されている「農薬、食品添加物が使用された食品」が輸入されるようになるのではないか、とか、②日本で流通が制限されている「遺伝子組換え食品」が輸入できるようになるのではないか、とか、③食品表示のルールについて、日本独自で決められず、アメリカと同じルールを押しつけられ、消費者の知りたい情報が隠されてしまうのではないか、そのような懸念を言っている方がいた。
これは全くの誤解であると思っている。先ほど言ったように、交渉開始前のいろんな情報、それがまだ消費者の方に残っているのかと感じる。
改めて、遺伝子組換え食品や、農薬、食品添加物など食品の安全性に関わるルール、食品表示のルールが変更されるのかどうか、石原大臣にお答えいただきたい。

石原伸晃内閣府特命担当大臣
食品に関する漠たる不安について、確かに存在するということは私も様々な場で話を聞いている。しかし、国産品であれ輸入品であれ、安全性が確保されていないものは流通を許してはいけない、これが基本だ。食品行政上の大原則と言ってもいい。この考え方は何ら、変更はない。
そして、では、TPP協定の中にそのようなことができるところがあるのかと言えば、TPP協定には我が国の食品の安全を脅かすようなルールは一切ない。このように認識している。
TPP協定のSPS章、第7章だが、WTOのSPS協定と同様に、各国に科学的根拠に基づく適切な措置をとることを認める、すなわち科学的に影響のあるものは駄目と我が国で決めれば、それは認めると明確に書かれているし、我が国の食品安全に関する制度に何ら変更を強いるものではない。我が国が必要と考える食品の安全に関する制度の変更をする場合には、新たな制約が加わるということは、この7章を読むと一切ないということが確認できる。
そしてもう一つ、こういうものを使っている、使っていない、といったような表示についても、懸念があると承知をしている。
これはTPP協定の貿易の技術的障害、いわゆるTBT章、第8章に書かれているが、これは、過去に私どもが結んだWTO・TBT協定と同様に、表示ルールなどを定める際の手続や透明性の確保等について定めるものであって、我が国の食品表示制度に何ら変更を及ぼすものではない。だから、圧力が掛かってこの表示を変えるということは一切ないと明記されている。
我が国が必要と考える食品表示制度の変更をする場合にやってはいけない等という新たな制約が加わるものではないと理解をしている。

山田
どうもありがとうございました。

(2)ISDS条項

山田
ISDS条項について伺いたい。このISDS条項、「投資家と国との間の紛争を解決する手続」である。TPP協定の投資に関する章の中の様々な義務、例えば内外無差別の義務、外国企業と国内企業を同等に扱えと、このようなことに国が反した場合に、その救済の手続を決めているものである。
これについて、裁判所でなく国際的な仲裁機関に救済を求めていくということであるが、この制度が日本の様々な国内制度を変更されるようなことになっていくのではないかという懸念がある。これに対して、そのような安易な訴えを防ぐ措置を規定しているとしているが、その内容について説明をいただきたい。

澁谷和久内閣審議官
ISDSにつきましては、様々な指摘があり、我が国の制度を変えるような訴えがなされるのではないかという、誤解もあるが、投資受入れ国がTPP協定に違反して、投資家が損害を受けた場合に、損害に関して損害賠償あるいは原状回復を求める訴えを提起することができるというものであり、制度変更を求めるような訴えができるわけではない。
また、投資受入れ国が、環境や健康などの公共の福祉に係る正当な目的のために、必要かつ合理的な規制措置を差別的でない態様で講ずることを妨げるものではない、ということも規定上明記されている。
それから、濫訴防止の規定も幾つか用意されている。例えば、仲裁廷の権限の範囲外であるという申立てがなされた場合に、その申立てを迅速に却下することを可能にする規定。あるいは全ての事案の審理、判断内容等を原則として公開することを義務付けている。また、申立て期間を一定の期間に制限するとか、投資家の請求に根拠がないと認められる場合に費用を投資家に負担させることができるなど、濫訴を防止するための様々な規定が盛り込まれている。

山田
どうもありがとうございました。

 (3)ISDS条項②

山田
今、説明のあったような濫訴防止等の措置が規定をされているということであるが、ISDSについての心配は、完全には払拭できないのではないかと私は思っている。そのような規定があったとしても、訴え出る人はまたいるし、また、その裁判所あるいは仲裁機関がどう判断するかも、やってみなければ分からないというところがあると思う。そういった中で、このISDS条項は受け入れるべき、必要だと私は思っている。
①日本が締結したEPA、FTA、経済連携協定においてISDS条項がこれまで盛り込まれてきたのかどうか、そして、②その設定をされている場合に、日本がこれを求めてきたのかどうか、そしてそれはなぜなのか、そのことについて外務大臣に伺いたい。

岸田文雄外務大臣
まず、①一つ目の、我が国が結んできた経済連携協定の中にISDS条項は含まれているのか、という質問については、今日まで我が国が締結した経済連携協定を含む投資関連協定は、ほぼ全てにISDS条項は含まれている。
②そして、我が国が望んだのかという質問については、そもそもISDS条項は、投資受入れ国が投資関連協定に違反したことによって、この当該国で事業展開をする日本企業が不利益を受けた際に当該国の政府を訴えることができるとするものである。我が国企業が海外で投資活動をする上において、予見の可能性あるいは法的安定性、こうしたものを向上させることに資する、こういった制度であるという認識に立っている。よって、協定上の投資保護を実効的なものにする上で有効であるとして我が国の経済界も重視している協定である。
このような観点から、我が国は投資関連協定の締結交渉に際してISDS条項が含まれるよう取り組んできている。その結果として、ほとんどの投資関連協定にISDS条項は含まれているのが現状である。

山田
このISDS条項は、もろ刃の剣である。こちらがやられた場合あるいはそうでない場合、双方ある。しかし、日本としてはやはり有効な条項である。
これまで質問を続けてきたが、このTPP協定については日本に多大な好影響を与える、そして日本の国内の被害は最小限に抑えられ、また対策も講じている。是非、また今後の国会審議を通じてこの中身を国民の皆様に分かってもらい、速やかに決定をしていくようにしたい。
本日はどうもありがとうございました。質問を終わらせていただきます。