平成27年7月14日 農林水産委員会

7月14日、「農林水産委員会」が開催されました。今回は、農協法・農業委員会法等改正案に対する質疑です。
下のテーマをクリックすると、そのテーマの質疑・答弁の該当箇所にとびます。
なお、正式な議事録については参議院ホームページ「会議録情報」をご参照ください。


【質問事項】
1.治山事業
(1)手取川の濁水問題に対する林野庁の今後の取り組みいかん。
(2)治山事業にこれまでどのように取り組んできたか。また、予防的な治山事業の実施に、どう対応するつもりか
2.TPP交渉
(1)交渉は最終局面をむかえているが、どのような方針で交渉しようとしているのか
(2)交渉に当たって、また、必要な場合、その後の対応についても、まず、我が国農林水産業への影響をしっかりと把握することが重要と思うが、どうか
3.農協法改正
(1)法改正の趣旨いかん
(2)農協中央会がこれまで果たしてきた役割いかん。中央会が「岩盤」となって、農協や農業者の活動を制限しているような実態があるのか。農協中央会制度はなぜ見直す必要があるのか
(3)中央会の監査のこれまでの役割をどう評価しているのか。監査によって、農協を締め付けているかのような実態があるのか。なぜ見直しが必要なのか
(4)農協理事や農業委員について、認定農業者などが過半である必要があるが、地域の実情に応じた例外規定を整備すべき。
(5)准組合員制度について、5年後の見直しまでに、どのような調査を行うのか。農協の経営や准組合員の利便性を考慮できるよう、しっかりと調査すべき。
4.農業委員会法改正
(1)法改正の趣旨いかん。
(2)選挙制を廃止し、市町村長の任命制としたのはなぜか。市町村長が恣意的に任命することがないよう、プロセスの透明化を図るべき。
(3)農業委員と農地利用適正化推進委員は、共同して農地流動化などの仕事に取り組む体制となるよう指導すべき。
(4)農業会議の新組織(ネットワーク機構)への移行について、スムーズになされるよう、指導を徹底するとともに、新組織の財政力の強化を図るべき。
5.農地転用関係
(1)農地転用の許認可については、公正を確保するため、現場から距離を置いた知事や大臣が行うことが適切とされてきたのに、市町村長に権限を下ろすのは、なぜか。公正さが確保できるのか。
(2)30アールを超える農地転用については、ネットワーク機構の意見を聞かねばならないが、30アール以下も意見を聞くことができる旨周知すべき。


1.治山事業

(1)手取川の濁水問題に対する林野庁の今後の取り組みいかん。
山田
石川県に手取川という川がある。この上流で大規模な土砂の崩壊があった。幸いにして人や田畑などに影響はなかったが、川が濁水になり、地域の農家、漁業の方も大変心配をしている。この状況が2か月以上続いている。崩落した場所は国有林で、道路もなく人が入れないところで、林野庁でヘリコプターを使って応急的な手当てをしてもらった。地元の方は大変速やかに対応していただき、感謝をしている。
できるだけ早く工事を終えて地域住民の方に安心してもらえるようにお願いしたいが、林野庁は今後どのように対応するのか。

今井敏 林野庁長官
手取川の濁水については、河口から上流約60キロメートルの国有林の斜面崩落から発していることから、農林水産省として、これまで6月2日に近畿中国森林管理局等による現地調査を行い、6月12日に応急対策工事の内容を決定し、6月17日には工事契約を取り交わす対応を行ってきたところである。
応急対策工事については、現地が道路もない奥地であることから、ヘリコプターを用いて、先日、7月12日の日曜日から崩壊斜面の浸食防止のための吹き付け工と崩落した土地の流出防止のための土止め工、この二つから成る工事を開始したところで、全力を挙げて早期完了に向けて取り組んでいく。

(2)治山事業にこれまでどのように取り組んできたか。また、予防的な治山事業の実施に、どう対応するつもりか。
山田
今回の山地の崩壊は、下流の農地や農業のみならず、河川の漁業や海面の漁業にも影響が出た。また、改めて治山事業の重要性を地域住民の方にも認識してもらった。そこで、一般論として、これまで治山事業にどのように取り組んできたのか伺いたい。
今回の事例のように、山地で崩落が起こった後に復旧工事をやることも大事だが、災害が発生する前に、予防的に治山事業を実施することも重要であり、有効ではないかと思っている。この予防的な事業の実施について林野庁の対応を伺いたい。

今井敏 林野庁長官
近年、集中豪雨等によって激甚な災害が多発している状況を踏まえ、本年6月に内閣府の中央防災会議のワーキンググループが取りまとめた報告書では、山地災害による被害を防止、軽減する事前防災・減災に向けた対策を推進していく必要があるとの方針が示された。
農林水産省としては、これまで荒廃地の復旧整備を重点に治山事業を進めてきたところだが、今後は、この中央防災会議の方針も踏まえ、地域の安全、安心の確保の観点から、事前防災・減災に向けた治山対策の強化に取り組んでいきたい。

山田
予算の制約もあると思うが、事前防災、減災の対策を事前に対応していただきたい。

2.TPP交渉

(1)交渉は最終局面をむかえているが、どのような方針で交渉しようとしているのか。
山田
TPP交渉(環太平洋経済連携協定交渉)では、先月末(6月29日)に、米国でTPA法(大統領貿易促進権限法)が成立した。これ受けて、TPP交渉が加速している。先週9日、10日には、日米間の事務レベル協議が行われた。
伝えられるところでは、今月24日から12カ国による首席交渉官会議、28日からは12カ国の閣僚会議を開き、大筋合意を目指しているという。
これまで、この委員会でも、平成25年4月18日に「農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること」等を内容とする委員会決議を行い、これを遵守して交渉がされるよう求めてきた。交渉は最終局面をむかえているが、どのような方針で交渉しようとしているのか、農水大臣に伺いたい。

林芳正 農林水産大臣
今後のTPP交渉会合は、主催国の米国政府が、首席交渉官会合を今月の24日から27日まで、閣僚会合を28日からハワイで開催する旨発表をしている。
TPP交渉については、一昨年2月の日米共同声明で、全ての物品が交渉の対象とされること、我が国の農産品にはセンシティビティーがあり、最終的な結果は交渉の中で決まっていくことが確認されている。このような経緯も踏まえて、衆参両院の農林水産委員会で、重要5品目などの再生産が可能となるよう、それらの品目の確保を最優先することなどが決議されている。
解決すべき困難な課題が残されており、交渉の早期妥結に向けて各国とともに努力をしているが、いずれにせよ、TPP交渉に当たっては、この決議が守られたと評価をいただけるように、政府一体となって全力を尽くす考えに変わりはない。

(2)交渉に当たって、また、必要な場合、その後の対応についても、まず、我が国農林水産業への影響をしっかりと把握することが重要と思うがどうか。
山田
交渉の内容は公表されていないので、現在どのような状況になっているのか、私たちには分からない状況である。特に、関税の引下げなどの市場アクセス分野で、どのような交渉が行われているのか、判然としない。
新聞などで伝えられるところでは、牛肉や豚肉の関税引下げや乳製品、小麦、コメについて無税又は低税率の輸入枠の設定などを交渉しているとされている。
交渉の具体的な内容については、交渉中であり、答えられないと思う。しかし、何らかの物品の関税が引き下げられる等、我が国の経済、特に一次産業に多かれ少なかれ影響を与えるのは、避けられないと考えている。
TPP交渉の影響試算は、平成25年3月15日に内閣官房から発表されている。その「政府統一試算」によれば、農林水産物生産額は3兆円程度減少するとしている。この試算は、一定の仮定――つまり、第1に、すべての農林水産物の関税が直ちにゼロになること、第2に、政府は、国内対策は一切考えない、講じないという前提の下に試算をしたものである。
実際の交渉では、この2つの仮定は、現実的ではなく、「3兆円の生産額の減少」になるものではないが、いずれにしても、我が国の農林水産業へのマイナスの影響が生じないよう、あるいは仮に生ずることがあっても最小限になるようにしていく必要がある。
この国会決議のポイント、一番重要なのは、引き続き再生産が確保されていくことである。交渉に当たっても、また、万が一、対策が必要になる場合であっても、国内の生産、再生産が可能かどうかという視点から、我が国農林水産業への影響をしっかり把握しながら対応してもらいたい。以上を重ねて伺いたい。

林芳正 農林水産大臣
このTPP交渉については、現在、各国と交渉を行っている最中なので、この途中段階で農林水産業の影響について言及をすると交渉相手国に予断を与えるということになり、交渉上不利益をもたらす可能性も出てくるので、差し控えさせていただきたい。
影響試算は、平成25年3月に内閣官房が中心となってまとめたものである。交渉が合意をした場合にこの試算を見直すかについては、内閣官房が中心となって判断をすべきことと考えている。
いずれにせよ、衆参両院の決議、これを守られたと評価をもらえるよう、しっかりと全力で交渉に当たっていきたい。

山田
これから交渉、そしてその後、どのように対応するか、一番大事なのは国内生産が維持されていくことなので、大臣の話からも、そのようなに対応されていることを理解した。是非、頑張っていただきたい。

3.農協法改正 

(1)法改正の趣旨いかん。
山田
地域の農協関係者や農業者の中には、今回の改正がなぜ必要なのか、わかりにくいという声を耳にする。規制改革会議など、農業・農村の実情をよく知らない方々の意見をもとに、「日本農業が直面する問題の責任を農協に転嫁するものだ」という意見も聞く。
そこでまず、今回の制度改正の基本的な趣旨・狙いは何なのか、地域の農協関係者、農業者にも分かりやすく説明をしていただきたい。

中川郁子 農林水産大臣政務官
安倍内閣では、農業を成長産業とし、地方創生の核としていくため、農林水産業・地域の活力創造プランに基づき、需要フロンティアの拡大、需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築、生産現場の強化を産業政策の柱とする農政改革を進めているところである。
こうした政策が成果を上げるためには、これらの政策面の見直しと併せて、経済主体が政策も活用しながら自由に経営を展開できる環境を整えていくことが必要不可欠である。特に、農協改革は、地域農協が意欲ある担い手と力を合わせて創意工夫を発揮し、自由な経済活動を行うことによって、農産物の有利販売に全力投球できるようにすることで農業所得の向上につなげていくことにしている。
このため、改正法案では、責任ある経営体制を確立するため、農協の理事の過半数を認定農業者などにするとともに、農業所得の増大に最大限配慮することなど、経営目的を明確化し、選ばれる農協とするため、農業者に事業利用を強制してはならないことを規定している。また、連合会、中央会については、地域農協の自由な活動をサポートする観点から見直すこととしている。
今回の改革を契機として、農業者や農協の役職員が徹底した話合いを行い、役員体制をどうするか、販売方式をどうするかを検討し実践していくことを期待している。

(2)農協中央会がこれまで果たしてきた役割いかん。中央会が「岩盤」となって、農協や農業者の活動を制限しているような実態があるのか。農協中央会制度はなぜ見直す必要があるのか。
山田
特に地域でよく理解をされていないのが、全国農協中央会(全中)や都道府県の農協中央会(県中)の見直しの部分である。あたかも全国農協中央会や都道府県の中央会が、岩盤規制、岩盤となって農協の自由な活動を妨げている、農業者の発展を阻害してきたかのようなマスコミの論調もある。
全中や県中にも改善すべき点はあると思っているが、一方で、農政の推進などの面で全中、県中は重要な役割を果たしてきたと私は思っている。そこで、全中、県中がこれまでどのような役割を果たしてきたと評価しているのか。
全中、県中が単協や農業者の自由な活動を制限してきたという、一部マスコミが伝えているような実態が本当にあるのかどうか、なぜ中央会制度を見直す必要があるのか、伺いたい。

小泉昭男 農林水産副大臣
中央会制度は、昭和29年に導入された制度で、これは当時、農協経営が危機的状況に陥っていたことを背景として行政に代わって農協の経営を指導することにより、農協組織を再建することを目的として続けてきたものである。
これまでの中央会の監査や経営改善指導により、合併が大幅に進んだ。農協の経営基盤の強化にも、成果を上げてきたと考えている。しかし、中央会の指導の結果として、中央会発足時、一万を超える農協があったが、単位農協は現在700程度に減少しており、特に1県1JA(これは現在、奈良、島根、香川、沖縄の4県があるが)も増加もしてきた。
JAバンク法に基づいて、信用事業については農林中金に指導権限が与えられていること、制度発足時とは状況が大きく変化をしており、このような状況を踏まえて、中央会については地域農協の自律と自由な経済活動を促し、これを適切にサポートする観点から自律的な新たな制度、連合会や一般社団法人に移行することにした次第である。
行政代行的には、指導を行う特別認可法人が自律的な組織に変更をし、全中監査の義務付けも廃止をすることで、地域農協の役員が従来以上に経営者としての責任を自覚して農業者のメリットを大きくするよう、創意工夫して取り組んでもらうことを期待している。

山田
副大臣の説明で、制度発足に比べて状況が大きく変わっている、その状況に合わせて変えていくという話だった。
これまで全中や県中が果たしてきた非常に優れた機能があると思っているので、新しい制度に移っても、それが引き続き実施されていくよう、対応を願いたい。

(3)中央会の監査のこれまでの役割をどう評価しているのか。監査によって、農協を締め付けているかのような実態があるのか。なぜ見直しが必要なのか。
山田
私が農協の方にお聞きした範囲では、中央会がこれまで行ってきた監査について、大変役に立った、助かったという意見が多かった。
農水省は、中央会の監査のこれまでの役割をどう評価しているのか。「監査によって、単協を締め付けている」との声も聞くが、そのような実態は、私が聞いた限りでは聞かれなかったが、本当にあるのか。監査制度を見直すということにした理由について、併せて伺いたい。

奥原正明 農林水産省経営局長
中央会はこれまで監査をやってきて、その結果として農協の信用事業、健全に総体として維持できていると考えているが、この中央会の監査については、外部の方からいろいろな意見がある。純粋な外部監査と言えないのではないか。そのような意味では、金融機関としてのイコールフッティングは確保できていないのではないかと、このような声があるのも事実である。
このようなことを踏まえて、今回の農協改革では、中央会を自律的な組織に移行するということと併せて、全中監査の義務付けを廃止し、公認会計士による会計監査を義務付けることにした。
これは、准組合員の数が農業者である正組合員を上回る状況になっているということ、それから農協の数も700農協になり、一農協の貯金量の規模も大きくなっている、中には一兆円を超えるところも出ている。このようなことに鑑み、農協が信用事業を今後とも安定的に継続できるようにする観点で、ほかの金融機関と同様の会計監査の体制を取ることが必要と判断をした。
業務監査は、ほかの民間の組織、これと同様に、農協の任意として、地域農協が農産物の販売体制の刷新等を進めて、農家の所得向上を図ろうとするときに自由に能力のあるコンサルを選べるようにすることである。
このような見直しをすることで、組合員にとっては安心して農協の信用事業を利用できるようにする。それとともに、今回の農協改革を契機として、地域農協の役員の方が従来以上に経営者としての責任を自覚して、農業者のメリットを大きくするように創意工夫して取り組んでいただくことを期待している。

山田
新しい監査の在り方、体制に移っていくということだが、これまでの中央会の監査も新しい組織に移っていかなくてはいけないし、農協の方からしても、今までと違う方法で監査を受けるということになっていくと思う。是非、スムーズに、混乱がないように新しい体制に移れるよう指導を願いたい。

(4)農協理事や農業委員について、認定農業者などが過半である必要があるが、地域の実情に応じた例外規定を整備すべき。
山田
先日、認定農業者の方と話をする機会があった。今回の制度改正で、「農協の理事や農業委員になることを内々、打診されているが、自分の農業経営もあり、引き受けるかどうか、悩んでいる」という話であった。
農協や農業委員会も、認定農業者が確保できるのかという問題もあり、認定農業者の方からすれば、これまで農業経営に集中していた方が別途またそのような社会的な役割を果たしていくという負担も増える。
地域の実情を良く踏まえて、例外措置を規定しないと、要件を満たせない農協や農業委員会が生じたり、一部の認定農業者に過度の負担となることも懸念される。どのような例外措置を設けようとしているのか、伺いたい。

奥原正明 農林水産省経営局長
今回の改革では、農業に積極的に取り組んでいる担い手の方の意見が農協とか農業委員会の運営に的確に反映されるようにすることで、原則として農協の理事についてはその過半数を認定農業者や農産物の販売や経営のプロとすること、それから、農業委員会の委員につきましてはその過半数を認定農業者とすることをそれぞれ求める規定を置くことにしている。しかしながら、地域によっては認定農業者の数が少ないなど原則どおりの構成とすることが困難な事情もあるので、あくまでも原則ということにしており、適切な例外を設けることにしている。制度の運用に当たっては、実態調査を行うことなどにより、制度の趣旨を踏まえながら、現場の実態を踏まえた適切なルールとなるよう十分留意したい。
例外を規定する農林水産省令の内容については今後検討していくことになるが、実態調査をした上で、必要がある場合には認定農業者のOBの方とか、あるいは集落営農の役員の方とか、このような認定農業者に準ずる方をカウントできるようにするといったこと等を想定している。

山田
実態に合ったような例外規定をお願いしたい。それから、できるだけ早くこの結論を出していただきたい。地域でも準備がいろいろあるので、早い対応を願いたい。

(5)准組合員制度について、5年後の見直しまでに、どのような調査を行うのか。農協の経営や准組合員の利便性を考慮できるよう、しっかりと調査すべき。
山田
私は「地方創生」の重要性という観点から、「准組合員の利用を制限すべきでない」と主張してきた。法改正附則第51条第2項で「5年間調査を行い、結論を得る」としているが、どのような調査を行うのか。法的な制限を加えることを前提とせず、農協の経営や、准組合員の生活の利便性も考慮した、調査をしっかりとやって欲しいと思うが、どのような調査や検討を行うのか。

奥原正明 農林水産省経営局長
農協はあくまでも農業者の協同組織なので、正組合員である農業者のメリットを拡大する、これが最優先である。したがって、准組合員のサービスに主眼を置いて正組合員である農業者へのサービスがおろそかになってはならないと考えている。一方で、過疎化、高齢化が進行する農村社会において、農協が実際上地域のインフラとしての側面を持っているのも事実である。
こうした状況を背景として、准組合員の利用規制について議論がされてきたが、これまで規制がなかったこともあって、正組合員と准組合員の利用実態が把握できていない。今回の農協改革によって農業者の所得向上に向けた成果がどの程度出るか、これを見極める必要もある。
このようなことから、准組合員の利用規制の在り方については、まず5年間調査を行った上で検討して結論を出すということになる。調査の内容については今後検討していくことになるが、事業ごとに正組合員と准組合員の利用量がどのくらいであるか、これは当然であるが、地域ごとに見たときに、その事業についてほかにサービスを提供する事業者がどの程度あるのかといったことも含めて、地域のインフラとしての側面の調査をする必要があると考えている。

山田
この准組合員の問題は、農協によっては非常にクリティカルな問題になるので、実態をよく見極めて対応してもらいたい。


4.農業委員会法改正

(1)法改正の趣旨いかん。
山田
農業委員会制度の見直しについても、まだ地域では十分に理解をされていないと感じる。新制度にスムーズに移行していくためには、農業者を含め地域の関係者によく理解をしてもらう必要がある。そこでまず、今回の法改正の趣旨について改めて説明を願いたい。

中川郁子 農林水産大臣政務官
農業委員会は農地に関する市町村の独立行政委員会であり、担い手への農地利用の集積、集約化、耕作放棄地の発生防止、解消、新規参入の促進など農地利用の最適化を積極的に進めていくことが何よりも重要であると考えている。
一方で、農業委員会の活動状況については地域によって様々で、平成24年に実施したアンケート調査によると、農業委員会の活動を評価している農業者は3割にすぎず、農地集積など農家への働きかけが形式的、また遊休農地などの是正措置を講じない、そして農業委員が名誉職となっているなど、農業委員会の活動は農業者から余り評価されているとは言い難い状況も見られる。
このため、今般の法案では、農業委員会がその主たる使命である農地利用の最適化をよりよく果たせるよう、適切な人物が確実に農業委員に就任するようにするため、公選制から市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に改める、また各地域における農地利用の最適化や担い手支援を行う農地利用最適化推進委員を新設する、そして都道府県農業会議、全国農業会議所の役割を見直し、指定法人制度に移行するとしているところである。
今回の改革で農業委員会が地域の農地利用の最適化をよりよく果たせるようになることから、農地の集積、集約化もより加速するものと考えている。

山田
中川大臣政務官からアンケート調査の結果の話があったが、活動を評価する方が3割だという。農業委員会は行政機関であり、農協などの経済活動を行う団体と違って、縁の下の力持ち的なところもあるので、このアンケート調査が、本当によく分かっている人たちを対象として、適切に評価されたものかどうかは、私は疑問に思う。そのアンケート調査は、農業委員会が厳しめに評価されているのではないかと思う。本当はもっと様々な役割を果たしているはずである。その点はもう少しじっくり見ていただきたい。

(2)選挙制を廃止し、市町村長の任命制としたのはなぜか。市町村長が恣意的に任命することがないよう、プロセスの透明化を図るべき。
山田
農業委員さんからは、「農地の流動化や利用調整の役割を十分に果たせるのは、選挙制度があるからだ」といった話も聞く。市町村長の任命制になれば、市町村長の政治的な関係者を任命するようなことも行われかねないと心配もされる方もいる。
なぜ公選制を廃止して、任命制にするのか、そして、任命のプロセスについて、透明性をどのように確保するのか伺いたい。

小泉昭男 農林水産副大臣
農業委員会は農地に関する市町村の独立行政委員会である。そして、その主たる任務、これは担い手への農地利用の集積、集約化や耕作放棄地の発生防止、さらにはこれらの解消といった現場の実務であるが、耕作放棄地が拡大するなど、必ずしも現在十分に機能していない面があると考えている。これは、農業委員の4割が兼業農家であるということ、担い手など農業経営に真剣に取り組んでいる者が主体となっていないことに起因する面があると考えている。
これらを踏まえ、今回の法案では、適切な人物が確実に農業委員に就任するようにするため、公選制から市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に改めるとしたところである。
その際、市町村長は、農業委員の選出について、第8条1項においては市町村議会の同意を得ること、さらに、第9条1項においてはあらかじめ地域からの推薦を求め募集を行うこと、そして、9条第2項においては推薦を受けた者及び募集に応募した者に関する情報を整理、公表すること、さらに、9条第3項で、推薦及び募集の結果を尊重しなければならないこととしており、このため、市町村長が合理的な理由なく恣意的に委員を選任することは困難と考えている。

山田
是非この選任に当たって透明性が確保されるような対応をお願いしたいと思うが、先ほど農業委員会の活動、特に耕作放棄地が拡大をしているという話があった。これは農業委員会の活動が十分でないという面もあるという話だったが、やはり、農業委員会ができることは限られている。一生懸命活動していても耕作放棄地を直ちに解消できるものではないと思う。耕作放棄地の問題は農政全般の問題であると思う。それを農業委員会が悪いから耕作放棄地が解消できないのだというのは、責め過ぎではないか。
もちろん、農業委員会だけのせいと言っているわけではないと思うが、もっと農政全般としてどう対応するかを考えないと、耕作放棄地の問題は解消できないのではないか。

(3)農業委員と農地利用適正化推進委員は、共同して農地流動化などの仕事に取り組む体制となるよう指導すべき。
山田
今度の改正では、農業委員のほかに農地利用最適化推進委員が委嘱されることになる。法律上、両者の違いは理解するが、地域の意見を聞くと農業委員さんも現場を回り、推進委員さんと一緒になって、農地の流動化などの業務に取り組む方が、農業委員会の仕事がスムーズに進むという意見が多いようである。
農地利用最適化推進業務の実際のやり方として、農業委員さんと推進委員さんが一体的に行う方法が考えられないか、伺いたい。

奥原正明 農林水産省経営局長
現在の農業委員の機能は、農業委員会としての決定行為とそれからそれぞれの農業委員の方の各地域での活動と、大きくこの二つに分けられる。
今回の改正では、この二つの機能それぞれが的確に機能するようにするという観点で見直しを行っており、農業委員とは別に農地利用最適化推進委員を新設することにしている。
改正後は、農業委員の方は、合議体としての意思決定の方に重点が置かれることになるが、農業委員会の総会あるいは部会に出席し、農地の権利移動や農地転用の許可に当たっての具申すべき意見を審議して、議決権を行使していただく。このようなことが中心になっていく。
一方で、推進委員の方は、これは担当区域が決まるので、自分の担当区域において、担い手への農地利用の集積、集約化とか耕作放棄地の発生防止、解消、このような農地利用の最適化の推進に関する具体的な活動を行っていただく。
このときに、農地利用の最適化の推進の成果を上げていくことを考えると、この農業委員とそれから推進委員、これの連携を図るということが極めて大事である。このために、今回の改正法の中では、推進委員は、この農業委員会が作成をする農地利用の最適化に関する指針に従って活動を行うことが規定をされており、農業委員会は、この指針を決めるときには推進委員の意見を聴かなければいけないという規定も入っている。それから、農業委員会の総会又は部会においては、推進委員に対していつでも報告を求めることができる、それから、推進委員の方も、自分の担当区域については、総会や部会に出席をして意見を述べることもできると、このような連携規定を置いているところである。
それから、この農業委員の仕事については、法律上の限定を特に設けていないので、法律上は農業委員の方が推進委員と一緒になって農地の流動化の現場の活動をおこなうことも可能である。ただ、農業委員の数も限定されているので、どこまで実態的にできるかということはあるが、そこは可能な限り連携を取ってやってもらうことも意味のあることと考えている。

(4)農業会議の新組織(ネットワーク機構)への移行について、スムーズになされるよう、指導を徹底するとともに、新組織の財政力の強化を図るべき。
山田
都道府県の農業会議は、来年4月1日に新組織(ネットワーク機構)に移行することとなる。各都道府県にとっては、全く新しい試みである。今、実際に各県で準備をしているが、戸惑いも見られる。定款をどうしたらいいのか、役員構成あるいは予算どうしたらいいのか、様々な問題がある。
全国農業会議所でも様々な相談に乗っているようだが、農林水産省としても新組織にスムーズに移行できるように指導・相談にしっかり対応すべきだと思う。
現在、農業会議も一般的に財政基盤が脆弱である。財政基盤の強化について、どのように考えているのか、お伺いしたい。

奥原正明 農林水産省経営局長
今回の法改正によって、農業委員会の業務をサポートする機関として、全国又は都道府県に一つ、農業委員会ネットワーク機構を設けることにしている。一般社団法人又は一般財団法人を国又は都道府県が指定をするというスキームである。
その際、現行の都道府県の農業会議が、改正法の施行日、これは平成28年4月1日だが、この施行日に農業委員会ネットワーク機構として都道府県の指定を受けて、その業務を直ちに開始できるようにするという観点で、特別な手続をこの法律案の附則のところに設けている。
財政面では、この法律の中に、国は、農業委員会相互の連絡調整や研修の実施、優良事例の横展開等の農業委員会ネットワーク機構が行う業務に要する経費の一部、これを補助することができるという規定が盛り込まれている。
農林水産省としては、この組織の移行に向けた準備作業等について、都道府県、都道府県農業会議への情報提供や相談対応を丁寧に行うとともに、都道府県農業委員会ネットワーク機構が農業委員会の支援を行えるようにするという観点から、必要な財源の確保に努めていく考えである。

山田
地域では手探り状態なので、丁寧にという話があったが、是非お願いしたい。


5.農地転用関係

(1)農地転用の許認可については、公正を確保するため、現場から距離を置いた知事や大臣が行うことが適切とされてきたのに、市町村長に権限を下ろすのは、なぜか。公正さが確保できるのか。
山田
今国会で既に成立し、公布された地方分権一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律)では、農地転用許可について地方自治体に権限委譲がなされた。4ヘクタールを超える転用であっても、農水大臣との協議は必要であるものの、都道府県知事に権限が委ねられた。そして、知事の権限は、農水大臣が指定する市町村の長へ委譲することも可能となった。
更に、今回の農業委員会法の改正では、県レベルの農業会議の後継組織(ネットワーク機構)への諮問案件は限定され、市町村農業委員会が意見を述べるだけのケースが増えることになる。そして、意見を述べる農業委員さんは、市町村長が任命した方ということになる。
これまで、農地転用行政は、地元関係者の利害に大きく関わることから、現地の自治体ではなく、地元から距離を置いた機関、つまり県知事や農水大臣、そして、都道府県レベルの農業会議が対応することにより、公正な行政を確保する、という考え方で制度設計がされてきた。今回のこの一連の制度改正は、これまでの考え方に逆行し、公正な農地転用行政が確保できるのか、懸念するところである。
新制度の下で、どのように転用行政の適正さを確保するつもりなのか伺いたい。

三浦 進 農林水産省農村振興局長
農地転用許可は、基本的に現場と距離を置いた判断ができる者が行うことが適切であると考えており、このような考え方から、農林水産大臣又は都道府県知事が転用許可の判断を行うこととしている。
先月成立した地方分権改革一括法による農地転用許可の権限移譲については、4ヘクタールを超える農地の転用について、都道府県知事が農林水産大臣に協議した上で許可を行うこととし、2ヘクタールを超え4ヘクタール以下の農地転用については、都道府県知事が許可を行うに当たり農林水産大臣への協議を不要とし、基本的な考え方を変えるものではないという認識である。
その上で、今回の指定市町村への農地転用許可権限の移譲は、優良農地の確保を図りながら地方分権を進めるという観点から、農地転用許可制度等に従って適正に運用すると認められること等農地の確保に責任を持って取り組んでいただける、そのような市町村の申出を受けて農林水産大臣が指定して、こうした市町村に限って都道府県知事と同様の権限を付与するということを基本としている。なお、今回の法改正による権限移譲に際しては、農地転用許可基準の緩和は行わないとしている。
今後、転用許可制度に関する事例集の作成や地方自治体の担当者への研修を行うとともに、指定市町村における農地転用許可制度の運用状況を把握して、必要な場合には是正措置を講ずべきことを求めることなどにより、今回の制度改正後でも農地転用許可制度の適切な運用が確保されることになるよう、努めていきたい。

山田
現場から距離を置いたところで判断をしていくという基本的な考え方は変わらないという話であった。この地方分権一括法の内容と今回のこの法案で改正をする内容を併せて見ると、県レベルの農業会議、ネットワーク機構が現場から距離を置いて農地転用について判断をするというケースが減り、現場に近づいて市町村長に任せられる。結果的に両方の法案を通して見るとそのようになってきている。しかし、私は、公正な転用行政を確保するには、現場から距離を置いた機関が関与することがふさわしいと考える。

(2)30アールを超える農地転用については、ネットワーク機構の意見を聞かねばならないが、30アール以下も意見を聞くことができる旨周知すべき。
山田
今回の制度改正では、都道府県のネットワーク機構の意見聴取が必須なのは、30アールを超える案件であり、これ以下のものは必ずしも必要がないということだが、これ以下の案件であっても、公正な行政の確保という観点からは、ネットワーク機構の関与が望ましいと考えている。
そこで、30アール以下の農地転用についても、ネットワーク機構に意見を求めることが可能であることを十分に周知し、農業委員会の選択によって、ネットワーク機構が活用されるようにすべきと思うが、どうか。

三浦 進 農林水産省農村振興局長
今回の改正により、農地転用許可に当たり農業委員会が許可の申請書に意見を付さなければならないとしているとともに、農業委員会は、30アールを超える規模の農地転用について都道府県農業委員会ネットワーク機構の意見を聞くこととしている。
これに加えて、今回の改正では、30アール以下の農地転用についても、農業委員会が意見を述べるために必要があると認めるときには都道府県農業委員会ネットワーク機構の意見を聞くことができるよう措置することとしている。今後、これらの改正内容について、農業委員会等の関係機関に対する周知を図っていきたい。

山田
先ほどの、市町村長に権限が移譲されるときに、市町村によっては権限をもらえば何でもできると思っている方がいるので、転用許可基準は変わらないということを周知していただきたい。