平成26年5月22日 農林水産委員会

5月22日、農林水産員会で、2つの課題について質問に立ちました。1つ目は、TPP交渉です。先週13日の質問に続き、19日、20日の2日間シンガポールで行われた閣僚会合に関連して質問しました。2つ目は、農協、農業委員会の改革です。5月14日に「規制改革会議 農業ワーキング・グループ」が「農業改革に関する意見」(参考資料)を公表しました。この提言はマスコミにも取り上げられていました。どのような問題点があるかを質問しました。是非、ご一読ください。

下のテーマをクリックすると、そのテーマの質疑・答弁の該当箇所にとびます。
なお、正式な議事録については参議院ホームページ「会議録情報」をご参照ください。


【質疑事項】

1.TPP交渉について
(1).閣僚会合の結果
(2).今後の決意

2.農業ワーキング・グループの提言について
(1).経緯と今後
(2).農協関係
(3).農業委員会等関係
(4).農地の権利移動(耕作目的)関係
(5).農業生産法人関係
(6).まとめ

【参考資料】(pdf)
※ 「規制改革会議 農業ワーキング・グループ」の「農業改革に関する意見」


1. TPP交渉について
(1) 閣僚会合の結果

山田

19日、20日の2日間、シンガポールでTPP交渉の閣僚会合が開催された。交渉の状況・結果、今後の予定・評価について伺いたい。

澁谷和久内閣府内閣審議官
今回の閣僚会合では、各国間の二国間交渉を加速し、また閣僚間で交渉全体の進捗を評価することを目指し、「市場アクセス」、「ルール」の双方で残された論点について、どのような形で交渉を前に進めていくか、全体会合で議論を行った。
その結果、今後の作業については、分野ごとに事務レベルで決着すべき論点と閣僚レベルで決断すべき論点を仕分し、交渉官にしっかりとマンデート(委任された権限)を与えて、6月中になるべく論点を少なくする。その上で、7月に首席交渉官会合を開催し、そこで間合いを詰めて、閣僚に上げるべき論点が絞り込まれるかどうかを評価することが、共通認識となった。
また、閣僚が出席していた8か国と2ヶ国間の会談を行った。今回は、日米協議が一定の進展を見せたこともあり、首席で任せる事項、一定の期限を切って解決する事項等、具体的な話をし、スイッチが切り替わった印象を受けた。
なお、日米協議であるが、甘利大臣とフロマン代表は、一時間ほど会談を行った。そのうち40分が、全体の進め方の議論であった。また、物品の市場アクセスについて、大江大使とカトラー次席との間で数時間協議が行われた。また来週5月29日、大江大使がワシントンに赴いて本格的な事務レベル協議を再開することが決まった。我が国としては引き続き関係国とともに努力をしていきたい。


1. TPPについて
(2) 今後の決意

山田
先週、この委員会でTPP交渉について、①情報の開示をしっかり行うこと、②衆参両院の国会決議を踏まえて交渉を行うこと、③米国政府がTPA(貿易促進権限)を取得していない状況の下では、慎重に対応すべきことの3点を質問した。今後の交渉について、改めて大臣の決意を伺いたい。

林芳正農林水産大臣
残された課題の解決に向けて、各国と精力的に交渉を進めるが、重要5品目などの聖域の確保を最優先するという衆参両院の農林水産委員会決議を踏まえて、国益を守り抜くように全力を尽くす考えである。


2.農業ワーキング・グループの提言について
(1) 経緯と今後

山田
5月14日に「規制改革会議」の「農業ワーキング・グループ」から「農業改革に関する意見」が公表された(参考資料)。この提言は、どのような検討を経てとりまとめられたのか。

滝本内閣府規制改革推進室長
農業ワーキング・グループでは、競争力ある農業、魅力ある農業をつくる、成長産業化を実現していく観点から、専門委員として農業者、農業経済学者の方々に加わってもらった上で、大規模農業者、若手の新規参入者、全国組織、地域の農業団体、学識経験者など様々な農業関係者からのヒアリングや意見交換などを行った。また、農業現場の視察も実施し、現場の農業関係者との意見交換も行った。具体的には、農業委員会の在り方については、主として農地の利活用、保全ということを中心に、全国農業会議所と3つの農業委員会からヒアリングを行っている。
農業協同組合については、農業者に貢献するといった観点から、全中、全農、全共連、農林中央金庫、ホクレン、8つの単位農協や新規就農者を含む若手の農業者の方々などからもヒアリングを実施した。これを踏まえ、農業ワーキングにおいては、農地を守ることや、農業者の所得向上などを重点とする農業改革の基本的視点を定めた上で、今回の提言がまとめられた。

山田
本当に農業の実態や制度の内容をよく分かっている人の話を聞いたのか、委員の方々が理解したのか、非常に疑問がある。①現場の実態を十分に踏まえていないのではないか、②現行の法制度の仕組みや役割について理解していないのではないか、③見直しの理由が不明確、一方的で、ここに書かれているような理由で、重要な枠組みを見直してよいのか、など疑問点が多い。この提言の策定過程で、農林水産省はどのように関与したのか。

吉川貴盛農林水産副大
農林水産省に対しては、2月3日、第8回目のワーキング・グループで、農業委員会の現状等に対して1度ヒアリングが行われた。このワーキング・グループの取りまとめに関しては、農林水産省は関与していない。

山田
農水省とはヒアリングを1回やった。メリット、デメリットを検討する上で、専門家の意見をよく聞いて、まとめるべき、一方の意見だけで書いていくと方向を間違う。今後、政府として、どのように案を取りまとめていく予定なのか。

吉川貴盛農林水産副大
今後、与党との議論や、農林水産省との調整を踏まえ、6月に向けて具体的な農業改革の推進について規制改革実施計画に反映をさせていきたい。

山田
現在、農政改革に国をあげて取り組んでいる。「農地中間管理機構などを通じた担い手への農地の利用集積」、「米政策の見直し」、「日本型直接支払い」といった改革が目白押しである。
これらの大改革を行おうとするこの時に、第一線で改革に当たってもらわなければならない、農協や農業委員会の方々が不安を持つようなことになっては、この農政改革も進まない。規制改革の名の下に、本当の農政改革がかえって阻害されるということがあってはならない。農協や農業委員会の改革は必要だと思うが、農業の発展や農政改革の推進に資するようなものであるべきで、農業者が困るようなものであってはならない。
農林水産省としての今後の方針を農水大臣に伺いたい。

林芳正農林水産大臣
昨年、4つの改革を盛り込んだ農林水産業・地域の活力創造プランを官邸の本部で決定をした。そのときに残った課題として、農協、農業委員会等の改革について考え方を記した上で、6月を目途にこの活力創造プランの改定ということで、盛り込んでいくことになっていた。
したがって、この農協や農業委員会の改革は、農業者、特に担い手の農業者から評価をされ、農業の成長産業化にも資するものでなくてはならない。
6月を目途にこの改革案を早急に検討し、活力創造プランの改定等に盛り込んでいきたい。

山田
是非、困らないような、農業の発展につながるような改革にすべき。


2.農業ワーキング・グループの提言について
(2) 農協関係

山田
具体的な内容について、例示しながら質問をする。まず、農協について伺いたい。
資料(参考資料)では、4ページの「3.農業協同組合の見直し」の中の2番目の項目に【中央会制度の廃止】の項目がある。これまで重要な役割を中央会は担ってきたと私は評価している。
現在、都道府県農協中央会、及び全国農協中央会はどのような役割を担っているのか。

奥原正明農林水産省経営局長
農協中央会は、農協法上、組合(農協と連合会)の組織、事業、経営の指導、組合の監査、組合に関する教育及び情報の提供、組合の連絡及び組合に関する紛争の調停、組合に関する調査及び研究、そのほか、中央会の目的を達成するために必要な事業を行う。
特に組合に対する指導として、合併の促進や、連合会の再編を進めることによる農協と連合会の経営基盤の強化、JAバンクシステムの下での経営不振農協の処理等の農協の健全性の確保に取り組んできた。

山田
中央会はこれまで重要な役割を担ってきた。以前に比べて農協の数が減ってきており、役割も変わってきているが、依然として、都道府県の中央会、全国農協中央会の重要性は変わらない。
この提言では、中央会が、単協の独自性・自主性を阻害しているかのような記述がある。本当にそうなのか。このような一方的な評価でなく、「優良事例を全国あるいは県内に展開したり」、「行政の手を患わせず自主的に問題解決する」つまり、監査では会計監査だけでなく業務監査もやり、事前にいろんな問題のチェックをしていく、問題が大きくならないように指導していく、まさに行政の手を煩わせずに系統の中でいろいろな改善措置を講じていく、といった中央会の機能・役割を評価すべき。

【全農の株式会社化】が項目としてある。
現在、農協系統の組織として、全農が存在しているが、どうしてそのようになっているのか。

奥原正明農林水産省経営局長
全農は、個々の農協が単独では行うことが難しい、例えば、量販店や食品産業等の大口の需要者への農産物の有利販売、大手の資材メーカー等からの生産資材の有利調達、こうした農協の経済事業を補完する目的で、農協が農協法に基づいて自主的に設立をした連合組織である。

山田
全農は、農協法上特別な位置付けがなされているものではなく、連合会の一つとして、単協などが発起人となって自主的につくる。民間で、自主的に組織した団体の法人格の在り方について、こうしろああしろということを国として言うのが本当に正しいのか、非常に疑問がある。

また、株式会社とすることのメリット、デメリットを十分検証しているのか。提言では「農業者の利益増進に資する観点から」と記述しているが、利潤を追求することが株式会社の基本なので、収益性の低い(例えば中山間地域などの)条件不利地域に対する対応が本当に利潤確保という観点から十分に行われるのか、不十分にならないのか非常に危惧される。慎重に検討すべき。

【単協の専門化・健全化の推進】の項目の中で、信用事業・共済事業の代理店化などを提言している。そこで、単協の「営農指導を含む経済事業」、「信用事業」、「共済事業」の収支、経営全体の中での位置付けを伺いたい。

奥原正明農林水産省経営局長
農協の部門別の損益を全国平均で見ると、平成24事業年度で、信用事業が3億5千万円の黒字、共済事業が2億1千万円の黒字、経済事業が2億3千万円の赤字になっており、トータルで、農協全体では3億3千万円の黒字である。地域別に見ると、例えば北海道の平均は経済事業部門で黒字になっており、個々の農協ごとに見ると、経済事業の部門が黒字の農協が全国で143、赤字の農協が574という状況。

山田
地域ごと、単協ごとに状況は異なるが、単協は、「経済事業」、「信用事業」、「共済事業」が総合的に実施される組織になっている。総合的に行うことで、経済事業の赤字がカバーされるような形で単協が成り立っているのではないか。

奥原正明農林水産省経営局長
農協法で農協の行える事業を列挙している。その中から、それぞれの農協ごとに農家組合員の選択によって、事業範囲を決める。多くの農協では、組合員の利便性を考えて、組合員が必要とするサービスを総合的に提供する。こういう観点から、「経済事業」、「信用事業」、「共済事業」を総合的に行っている。
一方で、現在の農協経営の平均的な姿を見ると、経済事業が赤字で、これを信用と共済事業の黒字で補填をするという形になっている。この金融事業が黒字であることで、農産物の有利販売とか、経済事業の改善につながらないことではいけないと考えている。農協がこの農産物の販売等に最重点を置いて積極的に取り組むにはどうしたらいいか、考えていかなければいけない。

山田
経済事業が、信用事業、共済事業におんぶをしていていいか、そこは考えねばならない問題であるが、どのような事業を行っていくかは各単協で決めること。協同組合が自主的に決めているものについて、国の方がこうすべきだと言うのは本当にいいのだろうか、疑問がある。
信用事業・共済事業の代理店化で、信用事業、共済事業が効率的に行われるのかどうか、単協の経営としてそれでいいのかどうか、様々な意見がある。「代理店方式ではJAの主体性が失われるのではないか」「共済事業の共同元受けによってJAの主体性が発揮されて事業が運営されている」そんなことを言われる方もいる。
そのような点も十分に考慮して、単協の経営が成り立つ改革にすべき。結局、農協が潰れてしまったのでは、農政改革できない。是非検討を願いたい。


2.農業ワーキング・グループの提言について
(3)農業委員会等関係

山田
資料の1ページの「1.農業委員会等の見直し」について、そもそも、農業委員会は、どのような業務を行っているのか。

奥原正明農林水産省経営局長
農業委員会の業務は、農地等の利用関係の調整に関する事項、典型的には農地法3条の権利移動の許可、農地等の利用すべき土地の農業上の利用の確保に関する事項、農地等の利用の集積その他農地等の効率的な利用の促進に関する事項、法人化その他農業経営の合理化に関する事項、農業及び農民に関する意見の公表、行政庁への建議、こうした事務を行っている。
そのほか、遊休農地対策として、毎年一回、その管内の農地の利用状況を調査し、遊休農地であれば、その農地の所有者に対して利用の意向調査を行うという業務もある。農地についての台帳を整備し、電子地図の形で見ることができるようにして整備をし、公表するといった業務もある。

山田
農業委員会は様々な本当に大事な業務を行っている。この提言では2ページの下から2つめの項目で「行政庁への建議、意見公表は廃止」としているが、この建議なども重要な仕事だ。
このような重要な業務をやっている農業委員会の委員について、どのような人が委員になってもらうのがいいのか。これは農業委員会の仕事が公正に、公平に行われていく上で非常に重要な点だと思っている。農業委員には、選挙委員と選任委員があるが、選挙制度が採用されている理由を伺いたい。

奥原正明農林水産省経営局長
農業委員会は設置された昭和26年にそれまで存在していた3つの委員会を統合して設立されている。農地解放による農地の売渡しを行った「農地委員会」、農業者から食料の供出を行った「農業調整委員会」、農業者への技術指導を行った「農業改良委員会」を統合して「農業委員会」が設立。
当時は、農地解放の直後で、どの農家の方もおよそ同じ経営規模であったこと、母体となった「農地委員会」あるいは「農業調整委員会」が元々選挙制を取っていたこともあって、選挙制を採用した。

山田
この選挙制度も、農業委員会の業務との関係で大事な仕組みである。歴史的経緯もあるが、現在でも権利義務の移動について農業委員会が許可したり、意見を述べたりすることがある。公平、公正に業務を行っていくことを担保するための一つの方法として選挙制度がある。実際に選挙が行われているのは一割程度だが、公平さ、公正さを確保する上で選挙制度がある、その担保になっている。その辺も十分考えるべきだ。

一方、選任委員には、どのような人がなっているのか。また、選任委員制度の意義は何か。

奥原正明農林水産省経営局長
選挙委員とは別に、選任委員があり、農協、共済組合、土地改良区の推薦委員と市町村議会の推薦委員がある。議会の推薦委員は、市町村議会の議員や女性農業者が選任されている。選任委員制度では、地域の農業関係団体、あるいは幅広い分野の学識経験者等の参画を得ている。

山田
委員の選び方は、農業委員会の業務のあり方とも密接に関連しており、総合的に検討する必要がある。選挙によって一定のクリアを経た方がその業務を行っていくことが極めて重要である。
農業委員は、どのような仕事をやっており、報酬はどうなっているのか。

奥原正明農林水産省経営局長
個々の農業委員は、農業委員会に出席し、農地の権利移動の許可等について審議をするほか、農地のあっせん、農地の利用状況調査、遊休農地を持っている所有者に対する指導、地域の人・農地プランの話合いなど、地域で様々な活動を行っている。
農業委員の報酬は、平均値で見ると月3万円の水準である。

山田
このワーキング・グループの提言の中で「農業委員に対してふさわしい報酬を支払う」というのはいい提案だと思う。
農業委員の仕事はなかなか大変で、いろいろな地域の合意に関わっているわけで、兼業農家の方のところにも行かなくてはいけない。そうすると、夜出かけて話をすることもあるわけで、献身的に仕事に励んでおられる。もう少し経済的にも報われることも必要だ。

次に「都道府県農業会議・全国農業会議所の廃止」を提言している。私は、農業会議、農業会議所は、大変重要で意義のある活動をしていると思っているが、これについての概要及び具体的にどのような業務を行っているのか、伺いたい。

奥原正明農林水産省経営局長
都道府県農業会議の業務は、農地法に基づく農地転用の許可に係る都道府県知事への答申、このほかに、農業、農民に関する意見の公表、行政庁への建議、農業及び農民に関する情報提供や調査研究、農業委員会への助言、協力とされている。
全国農業会議所は、農業、農民に関する意見公表、行政庁への建議、都道府県の農業会議の業務に対する指導連絡、農業、農民に関する調査研究、情報提供とされている。
都道府県農業会議、全国農業会議所は、法律上の業務に加えて、実態上は新規就農や企業の農業参入の相談窓口の業務を行うことで、担い手の育成確保に向けて活動している。

山田
都道府県農業会議及び全国農業会議所は、「担い手の育成・組織化」、さらに「広域化する農地の流動化」や「耕作放棄地対策」で極めて重要な役割を果たしてきた。
提言では、「農業会議及び農業会議所が、農業委員会の自主性・主体性を阻害している」かのような記述である。一体、どうしてそのような認識に至ったのか。市町村の行政委員会たる農業委員会の自主性・主体性が、簡単に阻害されるというのは、事実誤認も甚だしい。
農協や農業委員会などの組織に関する記述を見ると、まず、結論ありきで、あとで、適当な理由を付け足したのではないか、と思われるものが多々見られる。本当に真面目に議論をして結論を得ていただきたい。


2.農業ワーキング・グループの提言について
(4) 農地の権利移動(耕作目的)関係

山田
更に、ひどいと思われるのが、法令についての誤解、不勉強・無理解である。提言に【権利移動の在り方の見直し】があるが、これは、「農地法3条の許可は件数が少なく重要性が低下しているので「届出」でよいが、法人は厳重にチェックしなくてはいけないので「許可制」にする」との説明である。
この農地法3条の許可と農業経営基盤強化法18条による農用地利用集積計画の決定について農業委員会がどのように関与しているのか。農地法3条の許可と経営基盤強化法の18条の決定ではチェックする項目が具体的に違うのか、伺いたい。

奥原正明農林水産省経営局長
農地法3条は農地の権利移動について農業委員会が許可をするという仕組みである。農業経営基盤強化促進法は、簡易な手法によって農地利用権の集団的な移転を進めるという観点で、市町村が主体となって農用地利用集積計画を決める。決めるときには農業委員会の決定を経て、市町村が決めることになっており、この計画を公告することによって利用権が設定をされると、こういうスキーム(枠組み)である。
農地法3条の許可と農業経営基盤強化促進法の農地利用集積計画、これが同じか違うかという点は、権利移動をどのようにするかということで、不耕作目的の権利取得を排除する、農地を効率的に利用する者による権利取得を促進すると、このような観点から、農地を効率的に利用する者に権利取得を認めるという考え方に立っており、受け手が満たすべき要件は基本的に両制度で同じものが定められている。

山田
今、話があったとおり、基本的に農地法3条の許可と経営基盤強化法18条の農業委員会の決定は同じことをチェックしている。
経営基盤強化法18条の決定というのは、農地法3条の許可権限があって、それがあるからこの決定ができる関係にある。そのような意味で、「許可」と「決定」を違うように扱うというのは法律を無視したものだ。

農業委員会がチェックする要件のうち、法人と個人で異なるものと、同じものは何か。

奥原正明農林水産省経営局長
農地の権利移動については、不耕作目的の権利取得等を排除する、農地を効率的に利用する者による権利取得を促進するという観点から、農業委員会の許可制になっている。この許可を行う際の基本的な要件としては、取得後の農地の全てを効率的に利用する、取得後の経営面積が一定規模以上に達する、周辺の農地利用に支障がないこと、このような要件で、個人、法人共通である。

山田
個人の場合も法人の場合も、どちらも「ちゃんと農業経営を行うか」という点をチェックしている。「個人は「届出」でよく、法人は「許可制」が必要」という区別をする理由はない。このように法令についての無理解を前提に議論をしている。この提言は、根拠がしっかりしているか、本当に検証が必要である。


2.農業ワーキング・グループの提言について
(5) 農業生産法人関係

山田
農業生産法人の要件の見直し、が3ページに記述されている。現在、農地中間管理機構により、「リースによる規模拡大」を政策的に進めようとしているこの時期に、農地の所有を目的とする「農業生産法人の要件」を見直すのは、政策の整合性を欠く。
農業生産法人の概要及び、これらの要件がそれぞれ定められている理由について伺う。

奥原正明農林水産省経営局長
法人による農地の所有については、当該法人が継続的に農業を営む法人であるかどうか、これを確認するために農業生産法人の要件を設けており、具体的には、事業要件、構成員要件、役員要件がある。事業要件は、法人の売上高の過半が農業及び農畜産物の加工、販売等の関連事業であることとなっており、その法人が農業を主に行う法人であることを担保するためにこの要件は設けられている。
構成員要件は、農業者以外の構成員の議決権が総議決権の原則4分の1以下であることになっており、農業者の意向によって法人の経営方針の決定が行われるということを担保している。役員要件では、その法人の役員の過半が販売、加工を含めて農業の常時従事者であること、その過半の方の更に過半が農作業に従事することを要件としている。これは、その法人が農業を主に行う法人であるということを担保するために設けられているが、昨年の臨時国会で成立をした国家戦略特区の法律の中ではこの役員要件については特例が置かれており、農業生産法人の六次産業化を推進するという観点から、役員のうち一人以上が農作業に従事すればよいことになっている。
個人と法人でこの制度について差を付けているのはなぜか。法人の場合には、特定の目的のために設立をしたり、あるいは法人を分割したり、あるいは解散したりということもできる人為的な人格である。他方で、個人の場合には、兼業をしても自然人たる個人を分割することはできないし、相続による権利の取得を否定することもできないので、法人と同様の規制にはなじまない部分があると考えている。
特に、企業による農地の所有については、参入した企業が農業から撤退した場合に、その企業の所有する農地が耕作放棄地、場合によっては産廃置場になってしまうのではないかという農業の現場の懸念がある。このため、法人の農地所有については、個人と共通の基本的な要件を満たしていることに加えて、農業を主たる事業としてやっている農業者が経営方針を主導する。このような形で、農業を継続的に真剣に取り組んでいくことが担保される農業生産法人要件を満たしている法人に限って農地の所有を認めている。


2.農業ワーキング・グループの提言について
(6) まとめ

山田
今の農業生産法人の要件にしても、リースで規模拡大を進めていこうとする政策の中で整合性が取れているのかという問題もあり、リースで参入した場合には、経営を行わなくなった場合の対応策もしっかり取られているわけであるが、今のこちらの提言の方では、やめようとするときには許可制にするという。本当にそんなことが実際あり得るのか、可能なのかということを考えてみればすぐ分かることだ。
いずれにしても、この提言については、関係者の意見、専門家の意見、法令について十分踏まえずに、取りあえずまとめているような印象を強く受ける。これから農林水産省と協議をしながらまとめていくということであるので、正しい方向にこの改革が進むように、道を間違えないようにすべきだ。